山・自然資源の管理・保護・活用へ新しい取り組みが必要
●5月28日の天地での行方不明騒動と山菜無断採取
村民の方々は村内放送でご存知のことと思いますが、5月28日、天地(てっち)の奥の山で山菜採り中の人が行方不明になる事件がありました。
天地集落入口に集合する消防団(5月28日午後2時54分撮影)
幸い、出動した警察ヘリが発見し、救出されましたが、村の消防団が出動という事態になりました。行方不明者は須坂市の人で83歳の高齢。4人グループの中の1名でした。このグループは昨年秋にもほぼ同じ場所にキノコ採りに来て、やはり行方不明騒動を起こしていました。
今の季節、村内の至るところで無断で山菜採りに入って来る村外車を見かけます。これは一言でいえば、山菜の窃盗です。スキー場のゲレンデで自分たちが食べる分だけのワラビなどを採って嬉しそうにしている人たちの姿などは微笑ましくも思いますが、「どちらから来られたんですか?」という問いかけに対して、「市内からです」なんて返答をされると、少々カチンときます。「市内って?」とさらに問うと、「飯山市です」と。「栄村は栄村であって、飯山市の山じゃないよ」と私は言いたいのですが、私の心が偏狭(へんきょう)なのでしょうか。
間もなく野々海の雪が消えると、商売目的でのタケノコ採りが連日のように入ってきます。このケースはたまたま出逢っても下手に声をかけるのは怖いです。
野々海だけでなく、月岡集落の山などでも山菜採り目的の無断侵入が相次いでいるようです。
●蝶の無断採集や、無謀なトレッキング、雪遊び等々
5月中下旬以降、平滝から野々海への道路の近辺で、捕虫網を持った人の姿が見られます。これは過去10年以上にわたって見られるものであり、希少種ギフチョウが絶滅寸前になっています。あきらかに密猟業者と思われるケースも多いです。5月26日には、「福岡」ナンバーを見かけ、「何を捕るのですか?」と問うと、博多弁で「言わんといかんとか」と逆にすごまれました。
また、26日午前には、平滝のブッポウソウの観察場所としてよく知られている地点の近くに大きな観光バスが停車していて驚きました(下写真)。「バードウォッチングツアー」専門旅行会社の主催によるツアーで、客数は20名以上。もちろん、ブッポウソウの保護に取り組む地元の人たちへの連絡など無しです。保護に取り組んでいる人のお話では、「ブッポウソウがペアリングする時期で、非常にナーバスになっている」とのことでした。
下の写真は5月31日朝、トレッキングのため、野々海キャンプ場から深坂峠の方向へ、雪上を進むグループの姿。普段ならば私など喜びそうな光景ですが、このケースはとても推奨できるものではありませんでした。信越トレイルの天水山(あまみずやま)コースに行くというのです。天水山コースはまだ雪も多く、信越トレイル事務局でも「コース整備は6月14日」としています。遭難を引き起こしかねない無謀な行動です。斑尾(まだらお)から来た案内人が自身のことを「地元の人間です」と言ったことにもカチンときました。
さらに、残雪の多い野々海に雪遊びに来た若者たちが野々海池の存在を知らなかったのにも驚きました。この若者たちは私の注意を受け入れて安全な場所に移動しましたが…。
●村の総面積の約93%を占める山の管理の問題
ここまでに紹介してきた諸問題はすべて“山”をめぐって起きていることです。
「山林原野」は栄村の総面積約275.5?の93%近くを占めます。
昔は、材木の確保、薪炭づくり、田畑の肥料となるものの確保、ウサギやクマなどの狩猟等々で、山は村人の暮らしを支える重要な資源の宝庫として、しっかり手入れされ、活用されてきました。いまは、そういう山での活動は大きく後退し、森林組合による間伐等を除けば、ほとんど管理されないままになっています。これは、近代化・現代化による産業や暮らし方の変化による事態であるとともに、高齢化の結果でもあります(山菜採りに入っていた村人が高齢のため山に入れなくなった)。
芽吹きがきれいですが、灌木が無秩序に生え、体力がある人でないと入
りづらいところ。だが、ここの素晴らしい資源がある(次の記事参照)
しかし、いろんな意味で資源の宝庫であることに変わりはありません。だからこそ、1つには、よそ者が勝手に入り込み、山菜を無断採取したり(=“窃盗”)、自然資源を傷める行為や遭難騒ぎが発生 したりするわけです。
もう1つ、山の管理ができていない結果として、クマなどの有害獣の増加、農業への被害の拡大、さらに人身への危険の増大という事態になっています。こちらも、この間の3つの号で訴えてきたように“待ったなし”の危機的な状況になっています。
●山の管理・資源活用は村おこし・産業づくりにつながる
美味しい山菜は栄村の自慢の一つですが、山に自生する山菜は適度に採取しないと、山が荒れ、いいものが育たなくなります。あるいは、無断で立ち入った村外者が壊滅的な採り方をして、山菜資源を枯渇させてしまいます。集落毎や個々の地主が「入山禁止」や「無断山菜採りは罰金」等の看板を立てていますが、ほとんど有効性を発揮していません。
そんな中で、山を管理するというのは至難のことと言わざるをえません。
しかし、〈山を管理する〉、すなわち山菜期やキノコ期のパトロール、山主が山菜採りに入れなくなった山での山菜採りの代行と山菜の直売所での販売、里山歩きをしたい人たちのガイド、さらに有害獣対策のための電気柵の設置とその周囲の草刈り(山と畑・里の境界線の明確化)、こうしたことを仕事として進められるようにすることは、数年計画で事業化していけば、村おこし・産業づくりにつながり、発展していく可能性があると思います。
もちろん、〈言うは易く、行うは難し〉ことです。しかし、だからと言って、手をこまねいているわけにはいきません。試行錯誤をくりかえしながらでも、なんとかして実現していかなければならないと思います。みんなの知恵と努力を結集して、課題に取り組んでいきましょう。