飯山市照岡の山腹崩壊・土石流の6月5日段階の状況と、JRの対応への大きな疑問
- 飯山線
- 2017.06.07 Wednesday
飯山市照岡の山腹崩壊・土石流で4世帯への避難指示がだされたままになっている桑名川地区には2〜3日に1回程度の頻度で様子を見に行っています。
(私が居住しているところからは車で15〜20分くらいを要しま
すが、栄村のいちばん西の地区・白鳥集落からは車で5分強で
出川橋に至ります。)
避難指示地区での大型土嚢補強の作業が進み始めていました
写真0605−1
この写真は5日午前9時15分に出川橋から撮影したものです。
これまでになかった黒い袋の大型土嚢が積まれ、「仮側堤」は嵩上げされています。また、「土嚢の裏側にコンクリートブロックを設置する」という工事のためでしょうか、鉄板を敷き詰めた工事用仮設道路ができています。(対照写真として5月29日のものを掲載しておきます。下写真です)
3日の記録は手許に残っていないのですが、2日朝にはこういう状況は見られなかったので、ここ1〜2日の新たな動きだと思います。避難指示の解除のために必要不可欠な措置ですので、「一歩動き出したもの」として評価・歓迎したいと思います。
6月1日のレポートで写真27−12−1〜4で示した出川橋周辺よりもやや上流の部分でも同様の作業が進められていました。
写真0605−2
この他、出川橋より下流の状況、コンクリートブロックの設置について書いておきたいことがありますが、いま、ある意味で最も深刻な問題とも言えるJR東(長野支社)の対応の問題を先に取り上げたいと思います。
JRには主体的な対応が見られない
――代行バスの運行では事態は打開できません
5日のTV,6日の新聞では、JR飯山線戸狩野沢温泉駅〜森宮野原駅間の運休に伴う代行バスの運行開始が大きなニュースとして取り上げられていますが、JR飯山線運休の深刻さと問題の根本を把握していないニュース報道と言わざるをえません。
そもそも、土石流による6月22日の運休からすでに2週間を経てからの対応。あまりにも遅すぎます。(この間、地元の通学生のための「救済バス」というのは出ていましたが)
さて、最大の問題は、JRの飯山線運休が妥当な措置なのかどうかということです。
1.「 避難指示が出ているから」は妥当な理由か?
JR東(長野支社)は、飯山線戸狩野沢温泉駅〜森宮野原駅間の運転見合わせ(運休)の「理由」として、同線が通過する桑名川地区の一部に避難指示が出ていることを挙げています。
これはおかしいと思います。避難指示はあくまでも住民に対して出されているもので、屋内にいて外の様子がわからない時に土石流が発生する、あるいは夜間就寝時に土石流が発生し、逃げる余裕がないケースなどを想定しているものと思われます。
けっして交通機関に対して避難指示が出されているわけではありません。現に県道408号線の出川橋(通称「だんご橋」)は5月29日から通行止めが解除されています。もちろん「100%安全」ということではなく、常時、警備員が配置され、上流の土石流センサーが作動した場合にはすぐに通行止めの措置がとれるようにされています。また、降雨量が多くなった場合などは、予防的に通行止め措置がとられることもあると思われます。
出川に架かる飯山線の橋梁は出川橋のすぐ近くにあります。置かれている環境・条件等に大きな違いはないと思います。
私は現場に幾度となく足を運んでいますが、橋梁付近でJR関係者(JRが委託する警備員を含めて)の姿を見たことがありません。
「避難指示」を理由として「運転見合わせ(運休)」を説明することは困難だと考えます。
2. 県による土嚢設置補強に合わせてJRも橋梁の安全確保策の独自検討の必要がある
県が避難指示を解除できるよう、大型土嚢の補強等にのりだしていることは上述のとおりです。
この県の措置の結果、桑名川地区の4世帯に対して出されている避難指示が解除された場合、JR飯山線は運行を再開するのでしょうか。あるいは、もっと正確に言えば、運行を再開できるのでしょうか。
私は「否」だと考えます。
次の写真0605−3をご覧ください。
写真0605−3
この写真では、飯山線橋梁と、非難指示対象世帯家屋及び設置されつつある大型土嚢との位置関係がわかります。大型土嚢の設置が完了すれば、土石流が出川左岸を越えて民家の方に出ることはなくなり、基本的に河道に沿う形で流下することになります。その結果、JR飯山線橋梁に到達する土石流の高さは、土嚢未設置時に比べて高くなる可能性が出てくるでしょう。
そうした場合にJRはどう対応するつもりなのでしょうか。
そして、次の写真0605−4をご覧ください。
写真0605−4
こちらは橋梁のすぐ上流を撮影したものです。写真右真ん中隅に写真0605−3の土嚢が少し見えますので、位置関係がわかると思います。
出川は橋梁のすぐ手前で湾曲しています。勢いのある土石流は河道にしっかり沿って流れるのではなく、まっすぐ進もうとして橋梁の十日町方面側の盛土線路部分を直撃するのではないでしょうか。
そうした事態による線路及び橋梁の被害を防ぐには、まず、この盛土部分を土石流の直撃から守る何らかの補強が必要ではないかと思います。これはおそらくJR敷地内のことになるでしょうから、JRが独自に対応しなければならないことだと考えます。(土嚢を少し積んでいるようですが。)
また、次のことは県との協議、県の対応を求めることでしょうが、写真0605−4の川の湾曲部分の右岸側にかなりの量の土石流で運ばれてきた土砂の堆積が確認できます。この土砂を浚渫・除去し、河道のスムーズな流れを確保することは当然とるべき措置だと考えます。
3. 中条川の際に見られた迅速な対応がなぜとれないのか
ただただ「避難指示のため、運転見合わせ」ということだけを繰り返すJRに私が苛立つのは、2011年3月12日の栄村を襲った大地震と中条川での山腹崩壊・土石流、さらに2013年9月の中条川での再度の土石流に際しては、JRが今回とはまったく異なる迅速かつ的確な対応をしたことを知っているからです。
まず、2011年3月12日の大地震と山腹崩壊・土石流。
JRは、中条川に架かる飯山線の橋梁のすぐ横手で線路が宙づりになった事態をうけて、3月14日か15日の時点で、「4月下旬には運行再開できるようにする」と宣言し、すぐに被災現場に通じる工事用仮設道路の建設に着手しました。この段階では、国や県による中条川対策はまだ実相把握と対策の基本方針の検討段階です。そして、4月29日には列車運行を再開しました。
また、中条川に沿って存在する森集落中条地区では7月頃まで避難指示が解除されませんでしたが、JRは独自の安全確認手段と基準を設け、列車の運行にあたりました。
2013年の土石流は、飯山線の中条川橋梁を直撃し、橋梁の基礎部分に危険が生じました。JRは国・県の中条川土石流対策とは別に、自らの予算で橋梁と橋梁周辺河床の補強工事を行い、飯山線の運行に支障がないようにしました。
それだけのことがJRにはできるのです。
なのに、今回はどうして無策なままなのでしょうか。
「栄村地震−中条川土石流に対する迅速かつ的確な対応はやはり宮中ダム対策(+寺石踏切人身事故)だったのか」という思いが出てきてしまいます。
(注)JRは、首都圏の電車を走らせる電力を発電する小千谷
水力発電所に送る水を取水する宮中ダム(栄村の隣、新
潟県十日町市)で違法取水していたことが発覚し、水利
権をはく奪された。
JRは地元新潟県・関係市町に謝罪金を支払う、全国紙に謝
罪広告を出す等の対応をし、水利権回復にこぎつけた。
また、寺石踏切は栄村・森宮野原駅と新潟県津南町・足滝
駅間の踏切で、2011年の地震の約1ヶ月前、JR職員の誘導
ミスで乗用車が列車にはねられ、1名が死亡する事故があった。
今回の桑名川地区は栄村のすぐ隣ですが、新潟県の新聞・テレビでは長野県のようには今回の山腹崩壊・土石流のニュースは流れず、また、飯山線の森宮野原駅〜十日町駅間は列車が運行されているので、新潟県から批判される心配があまりないのかもしれません。
こういうことはあまり言いたくありませんが、あまりの無策ぶりを見ていると、こういうことも言わざるをえなくなります。
ましてや、7月1日からはJR自身が主導する「信州DCキャンペーン」が始まります。山岳観光を1つの主テーマとしていると聞いていますが、山岳観光のポイント・秋山郷の最寄り駅は飯山線森宮野原駅です。
その森宮野原駅までの運行を見合わせたままで「信州DCキャンペーン」は成り立たないと思うのですが、JRはどのように考えているのでしょうか。
長野支社だけでなく、JR東本社がどのように考えているのか、尋ねてみたいと思います。
冒頭に書いた出川橋よりも下流の状況は機会を改めてレポートしたいと思います。