つい先日、まだ各所に残雪が見られる中で、ブナの芽吹きが進み、あの特有の淡い緑色が春の到来を感じさせてくれました。その時、道路脇の土手などはまだ枯草と土の色だけしか目に入りませんでしたが、4月終わりが近づく中で、いっきに青草が伸び始め、下の写真のような様子に変わりました。
この写真は5月2日午前、貝立橋からスキー場方面に少し進んだところの道路脇で撮ったものです。
フキが目立ちますが、3ヶ所ほど、タンポポが見えます。それだけではありません。近づいて観察すると、こんな白い花がたくさん目に入ってきました。
これまでにも見たことがあるように思うのですが、何と言う野草なのか、調べたことがありません。図鑑で名前を特定できるように、3日午前、雨の中、もう一度同じ場所を訪ねて、葉の様子などを観察しました。写真に見える鋸歯縁状の葉は別の草のもので、これの葉は次の写真で示すもので、長楕円形のものです。
どうやらノミノフスマという名前の草花のようです。漢字では「蚤の衾」と書きます。「衾」とは寝具(夜具)で、現在の掛布団にあたるもの。小さな葉をノミの夜具に見立てて付けられたそうです。似た草花にノミノツヅリというものがあります。こちらは葉を「ノミの粗末な着物」に見立てての命名だそうです。
こういう植物の同定作業(簡単に言えば、植物の名前を確認すること)を始めると、少なくとも私の場合はとても時間がかかります。最近はあまりやらなかったのですが、4月末に『雑草はなぜそこに生えているのか』(稲垣栄洋(ひでひろ)著、ちくまプリマ―新書)という本を読んだことがきっかけで、ここ3〜4日、野に咲く草花がやたらと気になり、はまっています。
● 二ホンタンポポとセイヨウタンポポ
4月29日にその本を読み終えたのですが、とても印象に残ったのがタンポポの話でした。
タンポポには大別して、日本在来のタンポポ(二ホンタンポポ)と外来のタンポポ(セイヨウタンポポ)の二種があり、最近ではセイヨウタンポポが圧倒的に強く、二ホンタンポポの占める割合が小さくなっている、ということを聞いたことがある方は多いと思います。何年か前に、「栄村で二ホンタンポポを見つけたら知らせてほしい」と都市部に暮らす知人から頼まれたことがあったのですが、私には判別能力がなく、依頼にお応えすることができませんでした。
ところが、上記の本にこんな記述があったのです。
「集まって咲くタンポポと、一株だけで咲いているタンポポは
種類が違う……春先に、集まって咲いているのは、昔から日本
にある日本タンポポの方である。一方、西洋タンポポは、集まっ
て咲くことなく、一株だけで咲いていることも多い。」
「あっ、そんな特徴があるのだったら、私にも見分けができるかも」と思い、翌30日、タンポポが集まって咲いているところでタンポポの写真を撮りました。それが上の写真で、撮影場所は平滝から野々海に上がる道路を集落のいちばん上まで進んだところです。集まって咲いている姿だけでなく、一株だけ、さらに一輪だけをクローズアップしたものも撮りました。
さて、家に戻って、写真データを取り出しましたが、二ホンタンポポなのかセイヨウタンポポなのか、どう識別するか。色々調べて、識別の鍵は「総苞片」(ソウホウヘン)が反り返っているものはセイヨウタンポポということを知り、翌5月1日、もう一度、平滝の撮影場所に行きました。何枚かの写真をご覧ください。
1枚目の写真に2株見えますが、手前の株の一輪の様子を詳しく見たものが2枚目の写真。総苞片が反り返っていません。二ホンタンポポです! 二ホンタンポポにはいくつかの種類があり、これはカントウタンポポと呼ばれるもののようです。
他方、3枚目のものは明らかに総苞片が反り返っています。セイヨウタンポポですね。
じつは、このセイヨウタンポポ、上のものと同じ場所で撮ったものです。二ホンタンポポのすぐそばにもセイヨウタンポポがいるのです。
● 栄村でもセイヨウタンポポが優勢の模様
5月1日、2日、「復興への歩み」の配達などで村内各所を廻り、かなりの頻度で車を停めてタンポポを観察しました。やはりセイヨウタンポポが圧倒的に多いです。東部地区では現在までのところ、見たタンポポのすべてが「セイヨウ」。「二ホン」を確認できたのは今のところ、森と平滝だけです。
タンポポの種類なんて、そんなに重要なことではないと思う人もおられるでしょう。が、「セイヨウ」の単一種になってしまうと、気候変動が大きい昨今、生態系の保全にとって深刻な問題が引き起こされる可能性もあるかと思います。
農作業の合間のひととき、ちょっとタンポポを観察してみてみませんか。「うちの近辺には二ホンタンポポがかなり見られるよ」というようなご連絡をいただければ嬉しいです。