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栄村復興への歩み
2011年3月に震度6強の地震で被災した長野県栄村で暮らす松尾真のレポートを更新しています。

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栄村復興への歩みNo.334(5月3日付)

 

 4月26日、森集落の老人クラブが秋山郷へお花見に出かけました。
 この1枚は屋敷橋のすぐ近くにて午前11時近くに撮った記念写真です。後ろに二本筋の滝が見え、断崖に咲くオオヤマザクラが鮮やかです。素敵なところでしょう。この後に立ち寄った天池からの鳥甲山の眺望も素晴らしいものでした。
 昼のお花見の宴は切明の雄川閣にて。宴には秋山の地域おこし協力隊の三人にもご参加いただき、とても楽しい時を過ごせました。
 


4月最後の約1週間で景色が変わりましたね 青々した草がどんどん生え、その中で興味深い花が色々と…

 つい先日、まだ各所に残雪が見られる中で、ブナの芽吹きが進み、あの特有の淡い緑色が春の到来を感じさせてくれました。その時、道路脇の土手などはまだ枯草と土の色だけしか目に入りませんでしたが、4月終わりが近づく中で、いっきに青草が伸び始め、下の写真のような様子に変わりました。

 


 この写真は5月2日午前、貝立橋からスキー場方面に少し進んだところの道路脇で撮ったものです。
 フキが目立ちますが、3ヶ所ほど、タンポポが見えます。それだけではありません。近づいて観察すると、こんな白い花がたくさん目に入ってきました。

 


 これまでにも見たことがあるように思うのですが、何と言う野草なのか、調べたことがありません。図鑑で名前を特定できるように、3日午前、雨の中、もう一度同じ場所を訪ねて、葉の様子などを観察しました。写真に見える鋸歯縁状の葉は別の草のもので、これの葉は次の写真で示すもので、長楕円形のものです。

 


 どうやらノミノフスマという名前の草花のようです。漢字では「蚤の衾」と書きます。「衾」とは寝具(夜具)で、現在の掛布団にあたるもの。小さな葉をノミの夜具に見立てて付けられたそうです。似た草花にノミノツヅリというものがあります。こちらは葉を「ノミの粗末な着物」に見立てての命名だそうです。
 こういう植物の同定作業(簡単に言えば、植物の名前を確認すること)を始めると、少なくとも私の場合はとても時間がかかります。最近はあまりやらなかったのですが、4月末に『雑草はなぜそこに生えているのか』(稲垣栄洋(ひでひろ)著、ちくまプリマ―新書)という本を読んだことがきっかけで、ここ3〜4日、野に咲く草花がやたらと気になり、はまっています。

 

● 二ホンタンポポとセイヨウタンポポ

 

 4月29日にその本を読み終えたのですが、とても印象に残ったのがタンポポの話でした。

 

 


 タンポポには大別して、日本在来のタンポポ(二ホンタンポポ)と外来のタンポポ(セイヨウタンポポ)の二種があり、最近ではセイヨウタンポポが圧倒的に強く、二ホンタンポポの占める割合が小さくなっている、ということを聞いたことがある方は多いと思います。何年か前に、「栄村で二ホンタンポポを見つけたら知らせてほしい」と都市部に暮らす知人から頼まれたことがあったのですが、私には判別能力がなく、依頼にお応えすることができませんでした。
 ところが、上記の本にこんな記述があったのです。


    「集まって咲くタンポポと、一株だけで咲いているタンポポは

    種類が違う……春先に、集まって咲いているのは、昔から日本

    にある日本タンポポの方である。一方、西洋タンポポは、集まっ

    て咲くことなく、一株だけで咲いていることも多い。」


 「あっ、そんな特徴があるのだったら、私にも見分けができるかも」と思い、翌30日、タンポポが集まって咲いているところでタンポポの写真を撮りました。それが上の写真で、撮影場所は平滝から野々海に上がる道路を集落のいちばん上まで進んだところです。集まって咲いている姿だけでなく、一株だけ、さらに一輪だけをクローズアップしたものも撮りました。
 さて、家に戻って、写真データを取り出しましたが、二ホンタンポポなのかセイヨウタンポポなのか、どう識別するか。色々調べて、識別の鍵は「総苞片」(ソウホウヘン)が反り返っているものはセイヨウタンポポということを知り、翌5月1日、もう一度、平滝の撮影場所に行きました。何枚かの写真をご覧ください。

 

 

 

 

 1枚目の写真に2株見えますが、手前の株の一輪の様子を詳しく見たものが2枚目の写真。総苞片が反り返っていません。二ホンタンポポです! 二ホンタンポポにはいくつかの種類があり、これはカントウタンポポと呼ばれるもののようです。
 他方、3枚目のものは明らかに総苞片が反り返っています。セイヨウタンポポですね。
 じつは、このセイヨウタンポポ、上のものと同じ場所で撮ったものです。二ホンタンポポのすぐそばにもセイヨウタンポポがいるのです。

 

● 栄村でもセイヨウタンポポが優勢の模様
 5月1日、2日、「復興への歩み」の配達などで村内各所を廻り、かなりの頻度で車を停めてタンポポを観察しました。やはりセイヨウタンポポが圧倒的に多いです。東部地区では現在までのところ、見たタンポポのすべてが「セイヨウ」。「二ホン」を確認できたのは今のところ、森と平滝だけです。
 タンポポの種類なんて、そんなに重要なことではないと思う人もおられるでしょう。が、「セイヨウ」の単一種になってしまうと、気候変動が大きい昨今、生態系の保全にとって深刻な問題が引き起こされる可能性もあるかと思います。
農作業の合間のひととき、ちょっとタンポポを観察してみてみませんか。「うちの近辺には二ホンタンポポがかなり見られるよ」というようなご連絡をいただければ嬉しいです。


草花アルバム

ミヤマキケマン

 

ムラサキケマン

 

 ミヤマキケマンは5月1日、東部パイロットから柳在家に下る直前のカーブのところで見ました。図鑑によれば、「『ミヤマ』とつくが、平地に普通に生える」とあります。
 ムラサキケマンは4月20日、秋山郷上野原にて。21日に森集落の人から「開田でこんな花を見たのだが、何だろう?」と携帯の写真データを見せられ、「あれっ、そっくりなものを私も撮った」と思って、図鑑を調べました。そして、「白いものも撮ったな
あ」と思い、写真データを取り出したのがシロヤブケマン。19日午後、秋山郷屋敷集落での撮影です。

 

シロヤブケマン

 

 「ケマン」と名がつくものはすべてケシ科の植物で、よく見る「エンゴサク」も同一科です。


(図鑑は『いっしょに探そう野山の花たち』(信濃毎日新聞社)、『日本の野草300』を使用しています。)


野々海、ミズバショウ、カタクリの最近情報

 

 野々海池については、前号で4月21日の様子をお知らせしましたが、4月30日朝にも行ってきました。野々海池はまだ一面真っ白ですが、残雪量は相当減りました。ミズバショウ群生地の近くで歩いたところは、21日1m以上だったのが、50cmよりも少ないくらい。
 ただ、ミズバショウの開花は予想したよりも遅れていて、30日にはまだ開花が見られませんでした(上写真)。


 野々海水路の横倉・平滝と森・青倉の分岐点(2号分水器)付近の様子も示します(消雪用の炭が撒かれています)。

 


 ミズバショウは平滝の標高約670m地点の田んぼの近くのミズバショウがきれいでした。

 


 この平滝の群生地ではこれまでにあまり見たことがない光景に驚きました。元は湿地だったが今はカヤの枯茎に覆われているところで、その枯茎のすき間からたくさんのミズバショウが顔を出しているのです(下写真)。その生命力には感心しましたが、やはりカヤの繁茂はミズバショウの生育にとっては好ましくない環境。対応が必要ですね。

 

 

 カタクリは、5月2日現在、トマトの国近くの群生地では盛りが過ぎ、スキー場頂上が最高の見ごろです。
 スキー場頂上は、昨夏の草刈りの成果と思いますが、生育と開花の範囲が驚異的に広がっています。下写真は4月30日撮影のものです。

 


 北野天満温泉に始まり、長瀬のカタクリ街道、そして次にトマトの国周辺、最後にスキー場頂上、栄村では1ヶ月強にわたってカタクリが見られるわけです。観光のスポットとなる大きな存在ですね。
 カタクリ街道、トマトの国(丸山の裾野)では、カタクリが終わった後に、ヒトリシズカ(下写真)が咲き始めています。カタクリ街道では、よく観察すれば、県道沿いに見られます。トマトの国はまだ始まりですが、間もなく群生といえる状況になるでしょう。

 


 


自然資源、観光資源の〈調査・選定・管理・保全〉という施策を

 4月の栄村に夏日の日があるという“異常天候”の春になっています。そういう中でも、少し標高の高い地域に行くと、「まだようやく春が訪れたばかり」という感じの場合もあり、村内でも様子がかなり異なります。そういうこともあって、今号では自然界の様子を多く紹介しました。
 それらの記事には、もう一つ別の狙いもあります。「栄村は自然が豊か」とよく言われますが、自然や観光の資源という意味でどんなものがあるか、きちんと調査し、選定する、そしてそれらを管理・保全するという施策が必要だということを訴えたいのです。〈観光商品の開発〉の大前提・土台です。1頁で紹介した森老人クラブの素晴らしいお花見は栄村の素晴らしい地点の調査・選定への大きなヒントを教えていると思います。

 


4月26日、天池からの鳥甲山の眺望

 


4月26日未明、苗場山には降雪があったようです。樹々への着雪が天池から見えました。


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栄村復興への歩みNo.334 2018年5月3日発行
編集・発行人 松尾真 連絡先:電話080−2029−0236、 mail;aokura@sakaemura.net
ゆうちょ銀行 11100−1361481 栄村復興への歩み協賛寄金 ながの農協栄出張所 普通0009390 栄村復興への歩み発行協賛金松尾眞


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