5月25日発生震度5強の地震について(第2報)
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- 2018.05.26 Saturday
このレポートは26日午後5時すぎに書いています。
今日26日の朝以降は体に感じる地震は起こっていません。
このまま収まってくれることを願いますが、気象庁が記者会見で言っているように、ここ1週間、とくに2〜3日は要警戒です。先ほど、気象庁の会見をYouTubeで確認しましたが、「とくにここ2〜3日は震度5強よりも強い地震の発生の可能性もある」とのことであり、安心できません。
1. 今回の地震の影響が強かった地域
役場に集約されている被害情報、私が実際に歩いて廻った結果などから、25日夜の震度5強の地震による目に見える被害があった地域は、栄村の東部地区、とくに長瀬集落、北野川−志久見川を挟んで対岸の津南町百ノ木(もものき)集落(および伝聞によれが中子地域)に集中しています。
地図をご覧ください。
地図上方が北です。役場は地図の上方に位置しています(地図に赤字で役場と記載)。地図に記されている「長瀬」の名前を赤い線で囲んであります。
気象庁の記者会見で配布された資料では、今回の地震発生地点が2011年3月12日地震の発生地点のほんのわずか南寄りの箇所にマークされています。
また、「発震機構解」では、2011年3月12日と同じ「北北西−南南東方向に圧力軸を持つ型」とされています。
今回の地震は、2011年3月12日の地震とほぼ同じ所で発生している、ただし、震源が少し南にずれているように感じます。
震度発表では「震度5強* 栄村(北信)」、「震度4 津南町」となっていますが、この震度は地震計設置場所の震度です。栄村でも長瀬のあたりはもう少し強かったかもしれません。また、津南町でも百ノ木のあたりは少なくとも「5強」レベルの揺れだったのではないかと思います
*気象庁によれば計測震度は「5.3」だそうです。
2. 被害状況の写真
私は、26日午後2時間ほど、百ノ木、長瀬を廻り、被害箇所の撮影をしました。
地図にAと記した地点のもう少し南寄りの場所が百ノ木集落の田んぼの脇にお墓があるところで、写真1に示すようにお墓が倒れていました。
なお、写真2はそのお墓から北方向を撮影したものですが、写真2の右側奥に2011年3月12日の地震での中条川上流山腹崩壊の1号崩壊地が見えます。
写真1
写真2
この百ノ木のお墓がある所と、写真5、6で示す長瀬集落中尾地区の田んぼゾーンでの斜面のずれ落ち箇所は釜川(志久見川の上流)を挟んで向かい合っている位置関係にあります。
写真3
写真3は地図Bの地点で、建設会社「赤津組」事務所の1階シャッターと2階ガラス窓が破損している状況です。
写真4
写真4は地図のC地点で、中尾地区の田んぼゾーンに上がる村道にクラックが生じているものです。
今回、公道上で私がクラックの発生を見たのはこれが初めてです。
写真5
写真6
写真5と6は地図のD地点で、中尾地区の田んぼゾーンの西側の端、北野川に面して急崖になっている箇所の上部にクラックが発生し、崖側の地面が少し下方へずれているものです。ブルーシートは撮影直前に役場職員が応急措置として設置したものです。
地図のE地点については写真撮影していませんが、地震発生直後に「長瀬で1世帯が公民館に避難」と報告されたお宅がある場所です。
お伺いしてお話をお聞きしました。地震発生時、母屋の横の納屋におられて、家に戻ろうとしたが、地震によって玄関が開かなくなったので避難したとのことでした。玄関内の壁が損傷しているのも拝見しました。昨夜のうちに自宅に戻ることができたとのことです。
次の写真7は長瀬団地(地図のF地点)の1階フロアの壁にできた亀裂です。ちょっと見にくいかもしれませんが、亀裂が生じているだけでなく、片方が膨らんでいます。
写真7
なお、写真3地点と長瀬団地の位置関係は次の写真8のとおりです。
写真8
写真3の地点から北北西方向を撮影。
写真中央に見える建物が長瀬団地。
3. 現在の状況、役場の対応など
栄村の村内は、揺れが最も激しかったと思われる長瀬集落を含めて落ち着いています。日中は、長瀬でも田植え作業を行う人たちの姿が見られました。
役場は、昨夜の緊急対応をふまえ、今日26日朝から全職員を動員して、村内の被害状況調査を行いました。たとえば、写真5、6で示した被害箇所は役場職員の今朝からのパトロールによって発見されたものです。
村内ケーブルTV網を使用する村内告知放送も基本的に的確に行われたと言えます。
消防団、そして各集落組織は発震直後から迅速な活動で、安否確認等を行いました。
震度5強で、ライフラインが活きていたことも好条件でしたが、7年前の震災経験をふまえた迅速な対応ができたと思います。
4. 今後の課題
まず第1に、引き続き起こりうる地震への警戒です。
気象庁の記者会見によれば、今回の震度5強の地震を、「2011年3月12日の地震の余震」とみるか、それとも「今回は新たな地震活動の本震ないし始まりで、今後さらに地震活動が活発化する」とみるか、精査が必要としています。
村役場を気象庁職員が訪れ、「詳しいことは精査のうえで伝える」と言ってきたそうです。
第2に、被害状況の把握をさらに強化することです。
田んぼの被害(たとえば漏水)などは少し時間差をもって顕在化してくることがありえます。また、山の中での被害は簡単には把握できないものです。
第3に、被害に対する復旧対策とその財源の確保です。
これまでに確認されている被害の多くは「軽微」なものであり、住宅の被害などは基本的に個人での復旧ということになります。しかし、高齢者世帯も多く、公的支援を検討する必要があると考えられます。
また、写真4〜6で示した被害などは、「被害軽微」として「公共災害」として国が認定・支援する対象になるかどうか微妙なところがあると思われます。
2011年の震災では、栄村の地震が東日本震災の一環と認知されたことから国の大規模な財政支援等に恵まれたという面があります。それとの対比において、今回は村自力での復旧となることも予想され、村の財政運用が問われることになります。
村は議会に対して、5月28日午前9時から議会全員協議会(村長提出)の開催を申し入れ、議会はそれを受け入れました。
その段階で、村の被害確認状況と対策基本方針が提示されることになります。
最後に、私は今回の震度5強の地震をめぐって、一つのことを強く期待し、要望します。
それは発震機構解等を精査したものを気象庁から丁寧に報告してもらい、さらに地震学関係者が栄村で地震を引き起こしている断層の解明に真剣に取り組んでくれることです。
2011年3月の震度6強の地震については、じつは十分な解明が行われていないと私は考えています。東北での地震と津波の被害があまりにも大きかったため、気象庁も地震学者も栄村での地震にあまり目を向けておらず、地震を引き起こした断層の解明などが行われていません。
今回は、気象庁が記者会見説明を開催するなど、2011年3月栄村地震の際とは異なる対応が見られますので、栄村の地震について解明するチャンスだと思います。粘り強く気象庁等への働きかけをしていきたいと思います。
18時50分脱稿