プロフィール

profile
栄村復興への歩み
2011年3月に震度6強の地震で被災した長野県栄村で暮らす松尾真のレポートを更新しています。

カテゴリー

categories

サイト内検索

Search

カレンダー

calender
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< December 2019 >>

最近の記事

selected entries

最近のトラックバック

recent trackback

月別アーカイブ

archives

栄村関連リンク

links

携帯用QRコード

mobile
qrcode

ブックマーク & RSS

Bookmark&RSS

対策の発想法の根本に違和感――中条川土石流対策をめぐって

 4月26日午後4時前、「トマトの国」にむかった時、中条川の砂防えん堤を流れる水が濁っているのに気づきました。その時は偶々(たまたま)カメラを持っていなかったので、改めて出かけ直して撮影したのが下の写真です。ダムを落ちる瞬間は白く見えますが、ダムの上の流れ、下の流れはあきらかに濁っています。

 24日の昼前に見た時はこんなことはありませんでした。24日から陽気がよくなり、いっきに雪融けが進み、水量が増えて、上流の崩落地点のほうから土砂が運ばれてきているのです。

24日夜、中条川土石流対策説明会が開催される
 4月24日夜、役場2階大会議室で県北信地方事務所林務課による中条川土石流対策説明会が開催されました。

 会では主として林務課の萩原氏から昨年秋の新たな土石流発生をうけて変更された対策計画の骨子が説明され、その後、住民との質疑応答が行われました。
 新たな対策は工事を進める中で追加調査を行なって変更することもありうるとのことですが、ポイントは
    新たに谷止工を計6基つくる
    崩落地点直下について、水が現在、1号崩壊地の足元を流れて
    いるが、これが新たな崩壊を引き起こす危険があるため、排土
    して流路を反対側へ移す
と整理してよいかと思います。
 工事は4期にわたる計画で構成されていますが、1期工事そのものが何年で完了するのか、現時点では判断できず、最終的な工事期間はまったく未定とのことです。

崩落地点直下には40万㎥の土砂が堆積
1号崩壊地の断面図

 萩原氏の説明では3枚の図面が示され、その中で、1号崩壊地の横断図(上写真)と、昨年9月16日の土石流の流れについてのコンピューター解析の結果、さらに今後起こり得る土石流の予測シミュレーションの結果が提示されました。
 まず、昨年9月の土石流では57万㎥の土砂が流出したといいます。そして、現在、1号崩壊地には40.7万㎥の崩壊土砂が堆積していて、最悪の場合はこれが土石流となって流れ出るというわけです。
 昨秋の土石流の後、私は1号崩壊地の撮影を行い、クラックの存在を指摘しましたが、今回の説明会でその存在が初めて公式に確認され、このクラックからの崩壊を防止するため、このクラックの下の勾配をゆるくするべく、約3.8㎥の土砂を排出する計画であることがあきらかにされました。

写真中央のブルーシートがクラック地点
 
 しかし、それを除いて、約37万㎥の崩壊土が残されるわけです。その崩壊土を排出する計画はないのか質問しましたが、「ダンプ1台で運べるのが4?にすぎないので、とても搬出できない」との回答でした。たしかにそう言われると二の句をつげません。
 
「うまく流す」という発想法が必要なのではないか
 住民からの質問・意見で私が注目したのは、次の2点です。
    ダムをつくることによって河床(かしょう)が上っている。
    これがいちばんの問題なのではないか。
    昨秋、土石流が村道や田畑に流れ出た箇所に護岸堤防をつ
    くることを求めたい。
 この2つの意見には共通するものがあると思います。すなわち、谷止工(わかりやすく言えば砂防ダムです)で土石流を抑えようとすればするほど、土石流被害が大きくなるのではないかという捉え方です。
 私もそう思います。

土砂で埋まる谷止工の上流(「トマトの国」の下)

 昨今では、専門家の間でも、治水をめぐってダムにすべてを頼る発想法が批判されています。非常に時代を遡(さかのぼ)りますが、武田信玄が山梨県釜(かま)無川(なしがわ)の治水対策として考案した霞堤(かすみてい)というものがいま高く評価されています。洪水を一定範囲内で氾濫させ、洪水をうまく流下させる方法だと言っていいかと思います。
 国はいまだにダム依存の発想法で凝り固まっていますので、こういう発想法の転換を中条川土石流対策にすぐに取り入れることは困難ですが…。

 説明会に参加した住民からは、「『計画が決まりました』という説明会ではなく、『中条川の現状はこうだが、みなさん、対策について何かご意見はありませんか』と尋ねる段階から始めてほしい」という声が聞かれました。まったくそのとおりだと思います。
 なお、この説明会は県地方事務所林務課による説明ということで、村役場からは産業建設課長のみの臨席でしたが、村長、防災担当者等が出席して住民の声を聞く姿勢が必要だと思ったことを付言しておきます。
 

この記事のトラックバックURL
トラックバック