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栄村復興への歩み
2011年3月に震度6強の地震で被災した長野県栄村で暮らす松尾真のレポートを更新しています。

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栄村復興への歩みNo.221

中条川の状況は予想以上に深刻
 中条川の上流部崩壊地、また中条川下流(白山さまのお宮横の砂防ダムから千曲川まで)を歩き、その状況をカメラに収めてきました。
 昨年秋の土石流の後、私は1号崩壊地を訪れ、写真を撮るとともに、「9月16日の崩壊地点のすぐそばには地割れが多数できています。今年の冬、雪が積もると、雪の圧力でこの地割れ地点の地層が下へ、下へと引っ張られ、崩れることは必至だと思います」と報告しました(昨年10月22日「中条川の土石流災害をめぐって」。下はその際に掲載した写真)。


 さて、5月11日、この現場に行くとぞっとする場所に遭遇しました。
 地割れ(クラック)の先の方が完全に崩れ落ちているのです。



 
 下はこの崩れた地点を別の角度から撮影したものです。


 現場を訪れる前、ここまで深刻な状況は予測できませんでした。そして、この地点のすぐ横、山の崩壊斜面も深刻な状況です。

 斜面にネットをかけ、芝を植えた箇所が崩れてしまっています(元は写真右上方のように芝が貼られていた)。また、その左手のコンクリート吹きつけがされた箇所は吹きつけ面が浮いた状態になっています。
 最初に見た崩れた地点に見えるクラックは工事用仮設道路にずっとつながっています。また、仮設道路は以前よりも狭くなり、軽トラ1台がやっとの幅。とても工事用ダンプが入れる状況ではないと思いました。



 

1号崩壊地の全体状況
 
下流部の洗掘も深刻
 昨年9月の土石流災害で深刻になったもう1つの問題は中条川下流が激しく洗掘されていることです。河床がどんどん削られ、深く掘られているのです。そして、それに伴って川の横の法面が次第に削り落とされていっているのです。次の写真をご覧ください。

 上の写真は貝立橋の上から上流方向を撮ったものです(5月10日撮影)。川が深くえぐられています。そして、この洗掘の影響で両岸が少しずつ崩れていきます。下の写真はそのためについ最近、青倉大堰のすぐ近くで杉の木が根こそぎ倒れたものです。


 また、昨年末に完成した中条橋より下流の部分も深刻です。やはり川が深くえぐられていて、栄大橋の橋脚のすぐ横も崩れています(この箇所は今年、復旧工事が行われる予定)。そして、飯山線の鉄橋の橋脚周辺(この橋脚は昨年9月の土石流の後、補強工事が行われた)を見ると、ここでも川が深く掘れていて、橋脚の安全性を脅かす可能性が感じられます。

左に見えるのが栄大橋の橋脚


中央に見えるのが飯山線鉄橋の橋脚

問題の根本は土砂を堰き止めていること
 すでに見たように上流の崩壊地からはさらに土砂が崩れ、流出する危険性が大です。
 いくら砂防ダムをつくろうとも、またそこに溜まった土砂を撤去しようとも、すぐにまたダムは土砂で一杯になり(下写真)、機能しなくなり、最悪の場合は昨年9月16日のようにダムから溢れた土砂などが周辺地域に被害をもたらします。

冬の間にまた土砂が大量に堆積した減勢工事(セルダム)

 その一方で、下流部では川の洗掘が深刻。上流部と対照的な状況ですが、問題の根っこは同じです。素人がこんなことを言うのは僭越かもしれませんが、「土石流には砂防ダム」という判で押したかのような対策工事に終始していることが問題の根本だと思います。やはり川には土砂が流れないと、河川環境は守られず、川の最下流部(中条川の場合、千曲川−信濃川の河口・新潟市)の海岸線の後退(砂浜がなくなり、海岸線がどんどん下がり、陸地面積が減少する)にまで行き着くのだと思います。
 5月9日の北信建設事務所による復旧工事説明会で興味深い意見が出されました。「上に溜まった土砂を洗掘が激しい下流に運んで入れればいいんではないか」というものです。
 建設事務所の人は対応に困ったような表情を見せられ、意見を出された方が「やっぱり無理か」と言われて、その場は終わりましたが、私はこの方の発想法は正しいのだと思います。「土砂を止める」ことばかり考えていてはダメなのだと思います。

いろんな人を招いて抜本的総合的な検討を

 ラフティングで栄村でもお馴染みの戸狩の庚(かのえ)さんがブログで、「とても綺麗な長野県最後の秘境、栄村‥昨年の9月16日の台風被害で川の中にはパワーショベルやら工事用の敷鉄板やら。とても川下りを楽しめる環境ではありませんでした。本来川にないものが川に大量にある。そして危険を伴う物なので更に厄介です??困りました‥とてもマンパワーで動かせる物ではありません。復旧するのなら川の中まで綺麗にしてもらいたいです‥この自然豊かな環境を取り戻すため動きたいと思います?」と書いておられます。
 パワーショベルが流されたという話は聞いていましたが、ひょっとすると川に入って確認されたのは庚さんが初めてではないでしょうか。
 また、19日の信毎には「川岸の災害復旧、景観配慮」というタイトルで、わずか10行の小さな記事が出ていました。「国土交通省は、豪雨などの災害で被害が出た川岸を復旧する際、植物を植えたり自然の岩石を配置したりして、環境や景観に配慮することを決めた」という内容です。ヨーロッパで盛んな自然工法を取り入れようとするものかと思われますが、河川の自然工法の大事な点は単に景観云々ではなく、河川本来の環境をどう守るかにあるはずです。中条川の土石流対策はそういう考えとはほど遠い状況だと言わざるをえません。
 元々の中条川についてよく知っている地元住民をはじめ、庚さんのように自然(河川)環境の実情に詳しい方も含めて、いろんな人を招いて、中条川の状況のきちんとした把握することが必要だと思います。そして、それをベースに抜本的・総合的な対策を検討していくべきだと思います。そのほうが、イタチゴッコのように砂防ダム建設を繰り返し、何十億円ものお金を費やすよりも、財政的にもいいはずだと思います。


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