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栄村復興への歩み
2011年3月に震度6強の地震で被災した長野県栄村で暮らす松尾真のレポートを更新しています。

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クマの目撃地点の相互関係について

 

 地図に4つの赤丸を書き込みました。
 A点は、4月27日夕刻に「トマトの国」対岸の崖面にクマが現れた場所です。
 C点は、5月3日と5日の夕にブナの木に登っているクマなどが目撃された地点です。
 D点は、5月16日夜10時頃、クマが出没した地点(横倉の教員住宅前)です。このクマは子クマと聞いています。
 B点は、青倉の島田助一(じょいち)さんの奥さん・みなみさんがゼンマイ採りに行って、ススキの枯れ枝の先に何かの穴を見た直後、クマのうなり声を耳にしという地点です。5月初めのことです。
 このB点、じつは、A点から崖を登りつめた地点に他ならないのです。
 あの日、クマはまさにこの崖を登って、猟友会の人の捕獲銃から逃げ切りました。
 みなみさんがスキー場のある地点でクマの巣に出くわしたという話は、4月27日のクマ騒ぎのしばらく後に複数の人から聞いていました。しかし、私は地図でB点として示した地点とは異なるところだと理解していました。
 ところが、今日20日午後、助一さんと出会い、詳しい話をお聞きして、B点だとわかったのです。
 B点は、スキー場内のブナ林を抜けて、大きなカーブ(写真イ)を曲がって30mほど進んだところ(写真ロ、ハ)から右斜め上に上がって行った先にあります。何枚かの写真を示します。

 


写真イ

 

写真ロ

 


写真ハ

 

写真ニ


 写真ハの右側に見える道はスキー場内の村道、左側に見えるのは今は使われていない軽トラが通れる程度の作業道。この作業道を上がると、写真ニの地点。これはスキー場のゲレンデです。
 そして、ゲレンデを横切った先に写真ホで示す場所があります。これは問題のB地点があるゾーンです。

 

写真ホ

 

●島田助一さんの話をお聞きして
 今日、助一さんからお聞きしたところでは、みなみさんがB点でクマの巣に出くわした直後に、助一さんは猟友会の人に連絡をされたそうですが、すでに有害捕獲の期間(4月30日まで)を過ぎていたため、出動してもらうことはできませんでした。そこで、つぎに、役場に行き、話をされたそうです。その結果、役場は青倉に「注意 クマ出没」という看板を設置しました。が、助一さん曰く、「あんな小さな看板だけだぜ」と。
 私もその看板を見ましたが、助一さんと同様に思います。
 私は、助一さんから「危ないから行かない方がいい」と言われながらも、写真イ〜ホを撮るところまでしました。大きな音を出しながら、遠くが見通せる範囲内での行動です。
 これは、抜本的な対策をとる必要があると判断して行った、ひとまずの最小限の行動です。

 

●5月16日夜の横倉でのクマ出没について
 ところで、5月16日夜の横倉でのクマの出没について私が知ったのは17日夜のことです。知人からのメールで知りました。
 クマが出た横倉教員住宅前というのは栄小学校のすぐ近くで、月岡の子どもたちの通学路と接するところです。ところが、小学校に連絡があったのは17日午後の下校の後で、父母に一斉連絡があったのも下校後であったことから、父母の間で「教育委員会の対応が遅すぎる」と問題視されている――これが私が知人からもらったメールに記されていたことでした。
 私は、「教育委員会の問題というよりも、役場の有害獣担当の問題なのではないか。役場の関係部署に尋ねてみる」と返事しました。
 18日、まず、教育委員会の学校教育係を訪れ、事の次第について尋ねました。学校教育係の回答は、「担当部署から連絡を受けて、小学校にすぐに連絡をした。ちょうど職員会議の最中で、学校はすぐに父母に一斉連絡した」というものでした。
 そこで、続いて、有害獣対策担当部署である産業建設課を訪ねました。そこで判明したことは次のとおりです。
   イ) 16日夜10時頃、役場に目撃通報があった。
   ロ) 当直は2名。仮にA職員とB職員とする。電話にはB職員が

    出た。時間が夜遅くだったので、告知放送はしないことにし

    た。当宿直簿に「横倉でクマ目撃」という記録をした。
   ハ) 役場の有害獣対策の直接の担当者であるC職員は、17日出

    勤後、この記録を確認した。ただし、「横倉で目撃」という

    だけの記録であったので、小学校との関係性には思いが及ば

    なかった。
   ニ) B職員は、18日、午後3時頃まで役場を離れる仕事をしてい

    た。C職員は、B職員が役場に戻ってから目撃場所が横倉教員

    住宅前であることがわかり、小学校の通学路と密接な関係が

    あるとして、教育委員会事務局に連絡した。

 

 私が、ここに経緯を詳しく書いたのは、関係職員の責任を追及しようという意図からではありません。
 いちばんの核心問題は、クマをはじめとする有害獣の問題が村役場にとって危機管理上、即座の最大級の対応をすべき問題となっていない、ということです。
 即座の最大級の対応をすべき問題として位置づけされているならば、当宿直簿に「横倉」としか書かれなかったということにはなっていないでしょう。
 あるいは、B職員が役場外での仕事だったから、C職員が17日午後3時すぎまで具体的な現場を知らなかったということも起こりえないでしょう。携帯電話がほとんどのところに通じる時代ですから、B職員に連絡はとれるはずです。しかし、そういう連絡はとられなかった。これはC職員個人の問題ということではないと、私は判断しています。
 この関係でさらに踏み込んでいえば、昨秋、泉平でのクマによる人への襲撃事故があった際、現場にいた役場の担当職員2名は、いずれも有害獣対策担当1年目だったと聞いています。
 そういう重大事故を経験して、有害獣対策の重大性を身に染みて感じとっているはずの職員2名は今春の人事異動でいずれも他部署に異動し、C職員1名が担当となったのですが、彼は有害獣対策はまったくの未経験の若い職員です。
 私はこの人事に強い違和感を覚えます。人事権者は有害獣対策の経験と知識・知恵の蓄積ということの重要性をまったく理解していないのではないかと思うのです。

 

●クマ目撃地点を地図上に落とし、分析・考察することが本格的抜本的対策の第一歩なのではないか
 このレポートの冒頭に私は地図を掲載し、4つのクマ目撃地点を地図上に落としました。
 これによって、何かが見えてきますね。
 A点とB点の関係性は助一さんのお話もあり、明白です。
 私はC点とD点の関係性にも注目しています。この2地点、地図を見れば明らかなように1つの山(尾根)とその麓という関係性です。直線距離では約2km足らずです。1頭のクマの行動範囲内です。しかも、C点とD点の間に、昨秋、クマが罠にかかった地点、毎年クリの木にクマが登る地点があります。
 C点で5月3日と5日に私を含む数名が目撃したクマと、D点で16日夜に目撃されたクマが共通する可能性は十分にありうるのです。

 こういう検討作業をしていくことによって、危険ゾーンや要対策地点があきらかになっていくはずです。

 

●「近所の人も知っているから役場に通報しない」というのは正しくない
 ところで、クマのことが話題になると、「おれの家の柿の木にクマが来るんだ」という類の話がよく出てきます。その場合、「毎年のことだし、近所の人も知っているから、いちいち役場には通報しない」という話もくっついてきます。
 こういう話に覚えがあるという人は多いのではないでしょうか。
 しかし、この対応は正しくないと思います。
 べつに、役場に通報し、告知放送をしてもらって騒ぎにしろ、と言いたいわけではありません。
 「おれの家の柿の木にクマが来るのは毎年のこと」と言って済ますのではなく、一度、みんながクマ情報を役場に集約し、村のクマ被害の全体像をあきらかにする必要があるということを言いたいのです。

 

●いまが対策の最後のチャンスかもしれない
 先日、「報道ステーション」でクマ問題のミニ特集が放映されましたが、その中でクマの生態の研究者が、「これまでクマの一定頭数の維持(=クマの保護)が課題とされてきたが、近年、クマの頭数が維持すべき頭数の9倍近くになっている。いま、対策をしなければ、イノシシやシカのように増殖を抑えられない状況になってしまう」という警告をしていました。
 栄村でも、かなりの人が危機感を抱いておられるように、クマの頭数が保護が必要な水準をはるかに超えて増大していると思われます。
 いま、対策をしなければ、もはや制御不能な状態となり、人間が安全に暮らせるゾーンがなくなるという危険が迫っているのではないかと、私は危機感を抱いています。

 みなさんがお持ちのクマの動態に関する情報をすべて出していただいて、情報を整理し、分析・考察しなければならないと思います。
 私は議員としての使命も自覚し、議会で議論するとともに、役場と頻繁に話し合っていきたいと思います。
 ひとまず、みなさんの知っておられることを私に教えてください。一人でできることには限りがありますが、最大限の努力をしたいと思っています。
 どうかよろしくお願いします。


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