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栄村復興への歩み
2011年3月に震度6強の地震で被災した長野県栄村で暮らす松尾真のレポートを更新しています。

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栄村復興への歩みNo.150(通算第184号)5月31日


 ブナ苔玉「森彦」って、ご存知ですか?
―「地域資源の活用」の実例の1つ 

 昨30日、下高井農林高校(木島平村)環境クラブ顧問の山本元和先生という方のご訪問を受けました。
 下高井農林高校は、栄村からも毎年数名の生徒が入学し、村から通っています。そういう縁がある高校として、「栄村震災復興のための交流支援をできないか」というご趣旨での来村です。
 そこでご紹介くださったのが、ブナ苔玉「森彦」です。
 

ブナ苔玉「森彦」

 これは鍋倉山のブナ林で、ブナの実をとり、それを発芽させて、“盆栽”風に育てたものです。ブナ林で実から発芽したものを採取して育てるというやり方もできるそうです。
 葉の部分をよく見ますと、剪定がされていて、葉がどんどん繁るというようにはならないようにされています。また、根が育つ土の量が限られていますので、これ以上に木が伸びて、どんどん大きくなることもないそうです。
 要するに、“盆栽”なのですね。              


 この「森彦」の「兄弟」分として、「ブナ便」というものもあります。こちらはビンを鉢代わりにして育てるものです。左の写真がそれです。外から見ただけでは「ビン」だとは思えませんが、写真に見えるきれいな布でビンが巻かれているのです。


地域特産品になりつつあります
 「森彦」は下高井農林高校環境クラブが研究し、開発したものですが、鍋倉山の麓(ふもと)、飯山市温井集落の人たちがいま、「森彦」を作って販売したいという依頼があり、道の駅などで販売しておられるとのことです。
 下高井農林高校環境クラブは、「ブナを使った商品を作ることで、地域の人が地域の自然を知り、地域型の環境保全を進められるようにしたい」との考えでブナ苔玉の開発に取り組んでこられたので、温井の人たちの申し出に喜んで対応されました。


まさに「地域資源の活用」
 「森彦」の名前の由来は、鍋倉山の麓にある「森太郎」という樹齢400年にもなるブナの巨木にあります。
 山本先生からメールをいただき、「ブナ苔玉」というものを初めて知った時は、どういうものかよくイメージできなかったのですが、昨日、実物を拝見して、すっかり魅せられてしまいました。そして、「これなら売れるな」と強く思いました。下高井農林高校の農林祭りでは2千円で販売され、好評を得たそうです。まさに「地域資源を活かす商品開発」です。
 昨年は、JA中央会主催のごはんDE笑顔プロジェクト選手権の関東甲信越大会で優勝、全国大会に出場され、NHKで全国放送されたとのこと。


●7月頃に栄村で講習会

 山本先生のご提案で、栄村の人たちを対象とするブナ苔玉づくりの講習会をやってみたいと考えています。
 6月半ばまでは田植えが忙しいですが、それも終わった7月頃の開催を考えています。具体的な日時が決まったらご案内しますが、その際は是非、ご参加ください。

ゼミナール館の解体が始まりました


 残念なお知らせになりますが、今週はじめから栄村ゼミナール館(旧栄中寄宿舎)の解体作業が始まりました。
 役場から「今週から解体作業が始まる」との連絡をいただき、28日午前に訪れた時はまだ作業が始まっていなかったのですが、昨30日午後に訪れてみると、「食堂」があった部分がすでに解体されていました。
 私自身、3年間住まい、また、村外から多くの方が訪れられ、宿泊利用されたところですので、残念な思いでいっぱいです。
 また、2週間ほど前に、寄宿舎時代に寄宿されていた栄中の卒業生の方から声をかけられましたが、中学生時代をここで過ごした秋山出身の人たちの思いも感慨深く、複雑なものがあると思います。

 私としては、「なんとか保全・修復したい」という思いで、支援者の方々のご協力もいただいて努力してきましたが、「危険度が高い」との村の判断で解体に至ってしまいました。


「学びの坂」の方から見た様子

 ゼミナール館のような交流施設が必要であることは多くの方々が認識されているところです。今後、保全された古民家の修復などによって、そうした施設を確保できるよう、さらに努力していきたいと考えています。


国道117号線の通行にご注意を

 村の人は毎日の暮らしの中ですでに見知っておられる人も多いと思いますが、いま、国道117号線の市川橋〜県境間は至るところで震災復旧工事が行われています。
 このため、「片側交互通行」になっている箇所が非常に多く、国道117号線の通行には細心の注意が必要です。

 上の写真は30日朝、長野方向から栄村に向かって走っていて、「あさぎりトンネル」の手前で撮影したものです。
 トンネル手前から東大滝付近までの間が片側交互通行になっていて、栄村方向に向かう車がトンネル手前で信号待ちしている模様です。写真左手に西大滝ダムが見えることから、かなりの台数の車が信号待ちしていることがわかると思います。


● 青倉トンネル付近はとくに要注意
 こういう状況の中で、とくに青倉トンネル付近の通行が要注意です。
 1つは、横倉から森方面にむかって国道117号線に出る際の注意です。前頁で見たとおり、10台前後の車が随所で信号待ちしながら進んでくる結果、横倉トンネルから10台前後の車が続いて出てきます。横倉から国道117号線に出る際は、ちょっと停止時間が長くなりますが、10台前後の車が通過するのを待つようにすることが安全だと思います。
 もう1つは、青倉トンネルの青倉川出入り口付近です。

 写真に見られるように、トンネル出入口のすぐ近くで工事が始められています。
 このため、出入口のごく近くで、微妙な車線をしなければなりません。森方面から横倉−飯山方面に走行する場合、右写真に見える白線が切れるところで、まっすぐ進むのではなく、少し左にハンドルをきらないと、トンネルから出てくる車と正面衝突することになってしまいます。
 かなり危険な箇所だと思います。
 現場の誘導措置ももっと強化することが望まれます。
 工事は夏から秋にかけてまで続きます。朝の通勤時などは相当に混みますが、日々変わる通行規制に注意して、安全な走行を心がけていきたいものです。


<後記>

  • -
  • 2012.05.31 Thursday

 今週は木・金と2日間、京都に行くため、木曜未明のレポート書きになり、頁数も4頁にせざるをえませんでした。
 それにしても、タイトルが「栄村復興への歩み」に変わってからだけでも150号になりました。我ながら「よくぞ、150回も続いたものよ」と思いますが、復興への歩みはまだまだ始まったばかり。いや、これからこそが本番。
 これからもよろしくお願いします。

栄村復興への歩みNo.149 (通算第183号) 5月28日


栄村への復興交付金、ほぼ満額交付の決定

 26日の新聞でも報道されていますが、復興庁が25日、復興交付金(第2回目)の交付可能額を発表しました。
 栄村関係は、8億3765万5千円が認められ、4月3日に県と村が国に提出した計画額をほぼ満額認めるものとなりました。国としては2回目の復興交付金の決定ですが、栄村は今回が初めての計画提出で、最初の計画がほぼすべて認められたことはさい先のいいスタートとなりました。
 阿部知事は、「ほぼ求めた通りの金額が認められた。更に復旧・復興を進めていきたい」と発言されています(毎日新聞Webニュース)。
 また、県は25日、「この通知を基に復興交付金の交付申請を行い、速やかに事業を実施します。なお、現在栄村において策定作業が進められている『栄村震災復興計画』にあわせ、   


26日の信毎記事

今後必要な復興交付金事業について引き続き検討していきます」と報道発表しました。
 復興交付金事業の主な内容は以下のとおりです。

● 災害公営住宅整備事業等
 平成24年度事業額 8億4千万円 うち復興交付金7億1833万8千円
 うち、
災害公営住宅整備事業 事業費7億1100万円 交付金6億2212.5万円
村営住宅建設事業    事業費6900万円   交付金4821.3万円
災害公営住宅駐車場整備事業 事業費3000万円 交付金2400万円

●  被災地域農業復興総合支援事業(水稲共同育苗施設及び共同利用農業機械等)、農山漁村地域復興基盤総合整備事業(農地や水路等の整備に係る調査・設計、実施計画の策定)
平成24年度事業額 9875.9万年 うち復興交付金7931.7万円
*調査等をより詳細に行うため、申請計画よりも増額
うち、
平滝地区435.5万円、月岡地区761.5万円、泉平地区435.5万円
久保地区941.8万円、箕作地区327.6万円、妹木地区195万円など

●  道路事業
平成24年度事業額 5000万円  うち復興交付金4000万円
対象は県道長瀬横倉(停)線
―これは貝廻坂の1車線部分を拡幅する工事(復興計画策定委員会第2回での県の説明)計画を提出した県道箕作飯山線(=国道117号線の迂回路確保)は、国の「社会資本整備総合交付金(復興枠)」に採択され、復興交付金の対象からは外れた。
また、村道天代坪野線の計画は事業実施が平成25年度であることから、今回の復興交付金配分はなしとなった。

 今回の通知は、「配分可能額」の通知であり、今後、事業主体の村・県が改めて事業計画を精査した(一定の変更を含む)うえで、交付申請を行い、その後、事業実施という運びになります。
 担当役場職員の方は、大変な作業を短期に求められることになります。村民のみなさんが事業実施を待ち望んでいますので、頑張ってください。


加工用トマトの苗の植付け

 26日午前、菅沢農場を訪れると、広い畑に加工用トマトの苗が植付けられているのが見えました。
 その畑を見た後、アスパラハウスで斎藤克己さんと話した後、天地に向かおうとすると、どうやらトマトの苗の植付け作業中らしい様子が目に入り、その畑に行っていました。奥さん、娘さんと一緒に作業されている宮川頼之さんに出会うことができてお話を聞くことが出来ました。
    

加工用トマトの苗

 今年は雪が多かったので、ビニールハウス内で種まきをしたのは例年よりも遅く、4月3日だったそうです。その後、仮植という作業(苗が育つように少し大きめのポットに苗を植え換える)を経て、畑への植付けに至ったそうです。
 最初の一粒一粒の種まき、仮植、畑への植付けと、大変な作業の連続です。この後も、消毒をはじめとする作業が続き、8月の収穫に至ります。


植付け作業中の宮川頼之さんご一家   
       
栄村最大の人気商品・トマトジュースが美味しくできるよう、宮川さんご一家に声援を送りたいと思います。


村内至るところでゼンマイ揉み

 この時期、村内を巡ると、いたるところで、家の前庭などでゼンマイ揉み・ゼンマイ干しの姿が見られます。
 
写真は20日に坪野で撮影したものですが、左奥に見える家の前でもじつはかあちゃんがゼンマイ揉みをされていました。


大変な手間がかかるゼンマイ
 ゼンマイは栄村の代表的な山菜の一つで、北信地域の他の市町村の人などからも「栄村のゼンマイは違う。立派で美味しい」と言われます。ゼンマイ料理はむらのごっつぉの横綱格といっても過言ではないでしょう。
 でも、ゼンマイは大変な労力を要するものです。
 まず、採るのが大変。もちろん平地にも生えますが、やはり山の斜面などに自生するものが太くて、美味しい。「転んだりしながら採るのよ」とむらのかあちゃんは笑いながら言います。
 どっさりと重い大量のゼンマイを家に持ち帰ったら、今度は湯がいて、莚(むしろ)の上で干す、そして揉むという作業を繰り返します。
 新しく干したゼンマイを揉み終わると、その前に揉んで干しておいたゼンマイを揉まなければならない状態になっている。また、ゼンマイ揉みの作業を間近で注意深く見ていると、ただ揉むだけでなく、残っているわたを取るとか、そのごみを箒で掃くとか、いろんな作業があります。


 ゼンマイを干すのに最適な莚  

 ゼンマイを揉み、干すのに欠かせないのが莚(栄村では「ねこ」と言う)です。水の吸収がいいのですね。ところが、最近では、莚を編める人が少なくなり、莚は貴重品。古民家の屋根裏などに残っていた莚を取り出して使っている人が多いようです。


●安すぎる値段

 みなさん、自家消費のためにゼンマイを採り、保存のきく乾燥ゼンマイにされていますが、もちろん、有償で他人(ひと)に分けたり、出荷されることもあります。相場は1kg1万円。太い上物で1万2千円。
 この値段をどうみるか。
 「1kg1万円」と聞くと、都会の人などは「えっ! 高いなあ」と思われるかもしれませんん。
 でも、1kgの乾燥ゼンマイを確保するには10kgほどのゼンマイが必要です。元が太いものの場合、10kgから1.5kgほどの乾燥ゼンマイを確保することができるようです。
 そして、上に書いたような大変な作業が必要なのです。
 かかっている手間暇を考えれば、「1kg1万円」はとても商売になる価格ではありません。
 ところで、この乾燥ゼンマイを水で戻して、真空パックしたものですと、ゼンマイ100g360円ほどの値段になるようです。この場合、水に戻していますから、ゼンマイは3本程度。乾燥ゼンマイの100gよりはるかに少ないものです。これだと、採算がとれるのでしょう。やはり加工までもっていって初めて産業となりうるということですね。


●地域資源を活かす産業づくり
 こういうことをよく考え、復興にむけて、地域資源を活かす産業づくりを考えていくことが必要なのだと思います。

森の開田で代掻き


森の開田のいちばん上の田んぼ

 27日午後、久しぶりに森の開田に上がりました。
 復旧工事が終わった田んぼがかなり増えていて、とくにいちばん上の田んぼに行ってビックリ。もう田に水がはられていたのです。森の開田の田んぼに水がある!  2年ぶりのことです。20日の普請の時に水路のかけ口があけられたようです。
 ただし、喜んでばかりもいられないようです。夕刻に森の人にお聞きしたところによると、トラクターで代掻きに入ったところ、トラクターが田んぼに完全にはまってしまい、まったく動けなくなり、引っ張り出すのに往生したとのこと。      
 復旧工事の成否は、これから復旧田に水を入れることによって、あきらかになってきます。いちばん緊張をもって1枚、1枚の田んぼの状況をしっかりと見極めなければならないときを迎えているようです。
 

中条川上流の現在の様子


 中条川上流の山の崩壊現場、湛水池ができている箇所の現在の様子がわかりましたので、写真で紹介します。


 湛水池から流れ出る水の流れの幅が昨秋段階よりも広くなり、激しい音をたてて流れ落ちています。



湛水池の様子です。

 現在、この現場では、「右岸崩積土掘削」、「左岸崩積土掘削」、「流路掘削」、「湛水池埋戻し」の4つの工事が行われているようです。
 気になるのは、1つにこの地点のさらに上の山にかなりの大きさの崩壊面が見えるようになっていること(写真A参照)、2つに大崩壊面が安定しておらず、不断に落石があるような脆い状態にあると思われること(写真B、C参照)です。



写真A


写真B                     


写真C
 たしかに湛水池自体の水量は昨年に比べて少なくなっているようですから、湛水池の崩壊によって大規模な土石流が発生する危険は大きくないと思われますが、この地帯一帯の斜面崩壊、地滑りの危険性についてはもっと徹底的な調査と検討が必要なのではないかと思います。
 

栄村の草木


カタクリと雪のツーショット
(19日、スキー場リフト下り場付近にて撮影)

●アケビ

 
アケビ


アケビの花


アケビの新芽(山菜料理の食材の一つ)
アケビ関係の写真は20日撮影。