プロフィール

profile
栄村復興への歩み
2011年3月に震度6強の地震で被災した長野県栄村で暮らす松尾真のレポートを更新しています。

カテゴリー

categories

サイト内検索

Search

カレンダー

calender
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< July 2012 >>

最近の記事

selected entries

最近のトラックバック

recent trackback

月別アーカイブ

archives

栄村関連リンク

links

携帯用QRコード

mobile
qrcode

ブックマーク & RSS

Bookmark&RSS

栄村復興への歩みNo.163 (通算第197号) 7月30日

 栄小親子ラフティング

ラフティングを存分に楽しみ、百合居橋下の岸に上がって全員で記念写真
  
 28日(土)午前、栄小親子のラフティングが千曲川で行われました。
 この日は栄小を会場として親子キャンプが開催され、その最初のプログラムとしてラフティングが実施されたものです。

この日のコース出発点:東大滝橋下
上に見えるのは国道117の東大滝橋


白鳥大橋下の瀬を下る           

 この日のコースは、東大滝橋から百合居橋の間の約6.5km。途中には白鳥大橋下などに瀬があり、とても楽しいコースです。
 参加者は31名(小学生16人、大人15人)で、4艇に分かれて千曲川を下りました。平滝集落の下の千曲川でポーズをとるみなさんの姿を紹介します。








 この28日の栄小親子ラフティングに続き、29日(日)には栄村を訪れた千葉県のご家族が親子で百合居橋〜県境間コースにチャレンジされました。こちらのコースは東大滝〜百合居橋間よりも難度の高いコース。29日夜、千葉に帰られたお客さんからラフティングの機会をお世話された方に「とても楽しかった」というお礼の電話が入ったそうです。


8月4〜5日に栄村村民を対象にラフティング体験会を実施します
 次の週末、4日(土)、5日(日)には栄村村民を対象として、百合居橋〜県境間のコースを体験する会が催されます。それぞれ1艇(定員7名)の予定で、最大限1日2回の実施で28名まで参加可能です。
 藤木利章さん、樋口武夫さんなどから声掛けが行われていることと思いますが、このレポートで初めて知ったという方は、080−2029−0236まで電話でお申込みください。


栄村の観光をどう発展させていくか

 本日の記事で紹介したラフティングは、栄村の観光のこれからの発展の大きなカギを握るものです。
 このラフティングをはじめとして、観光を大きく発展させていくのに活用できる栄村の地域資源はとても豊かです。課題はその活かし方にあると言ってよいと思います。

* 絶好のチャンスを活かしきれなかった残念さ
 私は後から知ったのですが、28、29の両日、JR飯山線で特別列車が運行され、森宮野原駅に長時間停車したそうです。
 28日は栄太鼓のみなさんが駅前で歓迎の演奏会を行われたそうですが、それ以外は目立った取り組みがなかったようです。
 駅周辺の方にお聞きしたところによると、「お昼を食べられるところはないか」と尋ねる人や、「昔、このあたりに長野電鉄の路線バスの乗務員が待機する場所があったはずだが、その家がどこかわかりませんか?」と尋ねる人がおられたそうです。
 震災を契機として、かつて栄村に縁があった人がJRの特別列車運行の機会を利用するなどして村を訪れるというようなことが増えているようです。
 それに対して、村の側の受入れ態勢が立ち遅れているように思われます。非常に残念なことです。

飯山線車中から常慶院を見る   
これは冬の写真ですが、飯山線からの景色は日本全国のローカル線の中でも第一級のものです。

「ふるさと酒場さかえむら」から見えてくること

  • -
  • 2012.07.31 Tuesday

「ふるさと酒場」のHPから 


東京・神田に「ふるさと酒場さかえむら」がオープンしてから早3ヶ月強が経ちました。
 オーナーの黒澤正一さんから最近いただいたメールによると、いろいろ困難もあったようですが、好評をいただき、度々来店下さるお客さんも増えているようです。
 「ふるさと酒場」のお客さまの1つの特徴は、首都圏在住の栄村出身者や長野県出身者の人が「ふるさとの懐かしい味」を堪能され、故郷の自慢話や思い出話で大いに盛り上がっておられることにあるようです。
 これは、「ふるさと酒場を入り口に栄村を知り、栄村を訪れて下さる人を増やす」という「酒場」開店の狙いから見て、どうなのでしょうか。
 私は狙いの実現に大きくつながるものだと思います。
 私が知る村出身の人の場合、1回目は村出身の同級生と一緒に来られ、2回目は仕事仲間(栄村を訪れたことがない人)を誘って来られました。
 村出身者が東京で集うことができ、村自慢をできる場があれば、栄村を訪れる人を増やすことも大いに進みます。
 これにプラスして、「ふるさと酒場」に食材を出している村の人や、村のごっつぉ作り自慢のかあちゃんなどが店を訪れ、お客さんとお話しする機会などができれば、栄村観光に来て下さる人をどんどん増やすことが可能になっていくと思います。
 

「栄村のお米をいい値で売るために、どうするか」への 読者からのご意見から


 前号の標記の記事で「みなさんのご意見をお願いします」と書きましたところ、お二人から貴重なお話をメールでいただきました。ご紹介させていただきます。
 
森集落出身の方から

産直米のご提案レポートを拝読しました。
ここ10年ほどの実家(母と叔母)の取り組みと、少々の感想などをお伝えさせていただきます。実家の田は森の山の上にあります。
開田の記念碑もたっているほど、当時の開墾は困難を極めましたが、そのぶん風通しと水の良さがあり、手前味噌ですが本当においしいお米がとれます。
母 は、自分のところで採れたおいしい農作物をたくさんの人に食べてほしいという、いかにも栄村の農家の人らしい気持ちをもっているせいもあり、私にお米や野 菜を送ってくれる時に「誰それにも食べてもらえ」といって、ご近所や仕事の関係先などの分を一緒に送ってきてくれます。

 お米もその一つ でした。あるとき、差し上げたある著名な画家の方が、とても気に入ってくださり、それ以来10年以上、毎年1年分のお米のお買い上げを注文してくださって います。「復興の歩み」レポートにもありましたように、1年分前払い、毎月決まった日と決めて実家から宅急便で発送しています。
その画家さんのほかにも、私の友人や仕事関係の方からも注文があり、それ以来、多少の収入になっているだけでなく、美味しいと言ってくださる方々の声が、励みにもなっているようです。
母の性格というか、田舎の人らしい温かさといいますか、送るときには必ずちょっとした野菜等を一緒に送っています。時には庭に咲く花だったり、山菜の場合は料理の仕方だったり。それも毎回となれば大変た時もあると思われますが、まさに「交流」になっています。
たぶん、そんなふうに送っている農家は、栄村のほかの地区にもあるんでしょうね。

 どういうところで採れているのかも消費者にとっては気になることでしょう。産地である実家の田んぼの写真を見てくださった人はすっかり栄村のファンになり、震災の時にもとても気にかけてくださいました。
さめてもおいしいから、お弁当には栄村のお米じゃないとダメ、と言われたこともあります。ふだん、うちのお米しか食べていない私にとっては、「へえ、そうなんだー!」と、とても新鮮な感想として心にのこりました。
そのようなことから、お米の産地と生産者の紹介はもちろんですが消費者の「おいしい一言」「おすすめのわけ」などものせるチラシ(同封するお手紙)があればいいなあ、と思います。

 また、送るときのパッケージも意外と大事だと思います。
実は、震災のお見舞いをいただいた会社の人たちにと母がお礼にお米を用意したとき、適当な袋を農協他あちこちで探したようです。でもなかなかちょうどいいものがなく、津南のほうで手に入れたと話していました。
そ の後、青山のフリーマーケットのお手伝いのとき、渡邉加奈子さんに青倉米のパッケージのことをお尋ねしたところ、ネットで購入なさって自前のシールを貼っ ているいると聞いて、納得しました。それぞれの集落での「ブランド米」にしていきながら、ビジュアル的に「栄村」の統一感を出す(米に限らず)ことができ れば、さらに大きな力になるのかもしれないと思います。
パッケージデザインやパンフレットといった紙媒体のことでしたら、こちらでも多少はお手伝いできることもあるかもしれませんので、必要がありましたら、その折にはお声掛けください。



中越・田麦山の方から

 今回のコメ問題について意見を、ということでしたので、以下簡単に私見を書かせていただきます。
ブランド化を目指すための3つのポイント、復興の記録、歴史の紹介、環境の素晴らしさを伝えるということ、まったく同感です。その上で付け加えるならば、安全性のアピールということだと思います。
 昨年の原発事故以来、首都圏では食物の安全性について敏感な消費者が増えています(関西以西はそれほどではありませんが)。とくに、若い子育て世代の人と話すと、放射性物質についてはもちろんのこと、農薬使用についても厳密な要求がよく聞かれます。
 除草剤以外でも、カメムシ防除のためのクロチア二ジンは、自然界のキーストーン種であるミツバチへの深刻な影響が疑われています。これはコメの黒斑さえ消費者が気にしなければ使用しなくてよい化学物質です。

 完全無農薬を集落全体で達成できれば、大きなアドバンテージとなりますが、当然困難も付きまといます。田麦山の私たちの田んぼでは、十年 来有機無農薬でやっていますが、これを地域の人に求めるのは、除草などの作業量からいってとても無理ですし、だいたい相手にしてもらえません。
 しかし、小滝のような先鋭的な集落では、できない話ではないと思います。
そ して、これはコストアップになるので考え方ひとつですが、私は2年前から紙マルチを使って草を抑える農法を試しています。結果は上出来で、今年は地域の人 たちが見学に来るようになりました。完全無農薬という付加価値が付くのですから、販売価格にも当然上乗せできるはずです。
 さらに、コメの加工という方向があります。飯山の「笹ずし」のようなもの、あるいは特産のキノコなどを使った商品が考えられますし、特区の申請をしてどぶろく作りをするということもできるでしょう。

 いずれも実際の体験に基づいた貴重なご意見です。
 こういう体験談の交換、意見交換ができていけば、栄村のおコメをいい値で売れるようにする工夫がどんどん生み出せるのではないかと思います。
 「私はこんな経験、実績があるよ」という方、どんどん体験談、ご意見をお寄せください。

観光や交流に関心がある人が集まって大いに語り合う

 いま、栄村の観光の発展にとって必要なこと、大事なことは、観光のことを役場の担当者や観光業に携わる人たちだけにまかせっ放しにするのではなく、観光や交流に関心がある人が集まって、「こんなことをしたら、どうだろうか」、「私はこういうことだったら、やってみてもいいと思っているが」というようなことを、ワイワイガヤガヤと話し合うことではないかと思います。
 まず手始めに、いくつかのことを提案したいと思います。
 1つは、「ふるさと酒場さかえむら」を村人が何人かで訪れてみることです。何を持っていくか、「酒場」に行って、自分たちがどんなことをやるか、一度、話し合う機会をもってみてはどうでしょうか。
 2つは、観光の目玉の1つになるラフティングの体験を行い、「こんなところが面白かった」、「こんなことを企画するといいのでは」というようなことを意見交換する場をもつことです。
 3つは、みんなで栄村の「いいところ」を出し合い、「私のお薦め栄村観光コース」コンテストのような会を催すといいのではないでしょうか。その際、最近撮った写真や自分で描いた絵手紙、あるいは懐かしい昔の写真などを栄村観光宣伝のツール(道具)として発表し合うのも面白いと思います。
 
 とにかく、みんなでワイワイ、ガサガサ、動き出すことが大事だと思います。

東大滝橋横の復旧工事現場


 東大滝橋の横の崖が地震で大きく崩れた被災箇所についてはこれまで何度かレポートしてきましたが、28日の栄小親子ラフティングの取材の際、工事現場を河原から見ることができました。
 ちょっと気になったのですが、復旧工事は上の部分だけで終わってしまうのでしょうか? 下の崖が大きくえぐられている部分もなんとかしてほしいと思うのですが…。


ちょっといい景色


 ラフティングの撮影のとき、白鳥大橋上から撮影した明石(あかいし)集落の風景です。お隣の野沢温泉村になりますが、栄村の素敵な風景の1枚に加えてもいいんじゃないかな、と思います。
 

栄村復興への歩みNo.162 (通算第194号) 7月27日

  • -
  • 2012.07.28 Saturday
 今回のレポートは27日午前に書いていますが、朝8時前から陽ざしは強く、今日も一日暑くなりそうですね。
 道路の復旧工事などで一日中、炎天下に立って作業に従事されている人たちの姿を見ると、本当に頭が下がる思いです。
 
 今日は、いまパブリック・コメント(意見募集)が行なわれている「復興計画」との関係で、お米の販売(農業)について、問題を提起してみたいと思います。


栄大橋で通行整理に立っておられる作業員さん

栄村のお米をいい値で売るために、どうするか

 「いまのコメ価格(JA出荷価格)では、とてもやっていけない。玄米1俵で2万円はほしい」という声をよく聞きます。
 他方、「復興計画」(骨子)では、
「集落等を基本単位とする米のブランド化と産直等の販売推進(米収入増による米作りへの生産意欲の向上)
ということが、「基本方針3 農業を軸に資源を活かした新たな産業振興」に書き込まれています。
 じつに切実な問題です。


* 栄村にも「いい値での販売」の実績はたくさんある

 お米を作っている農家1軒、1軒にお尋ねしていくと、精米価格で1kg500円以上(1俵では3万円以上になる)で売っているという事例はかなりあるようです。
 ただし、個々人が自分の知り合い等を対象に売られているケースが多く、数量は限られています。
 これを、どう考えるか(評価するか)が一つ、重要なポイントとなると思います。
 つまり、これを、「そんな小さな規模では話にならない。栄村の米全体をブランド化し、ドーンと売れるようにしなければ…」と考えるのか、それとも、個々の農家の小さな努力の積み重ねの上に「栄村の米のブランド化、いい値での販売の拡大」を展望していくのか、です。
 

* 各農家の小さな努力の積み重ねを、集落での取り組みに発展させていく

 私は、「栄村の米全体のブランド化」には異論ありませんが、「ドーンと売る」という考えには疑問を感じます。
 やはり、1軒、1軒の農家がやって来られている販売努力を大事にし、そこから教訓を学び、それを、集落を単位とする産直販売などに高めていくことが成功の道ではないかと思うのです。


* 交流から産直へ

 青倉集落を見ると、もう20数年前に遡(さかのぼ)る道祖神祭りでの交流で親しくなった都会の人たちにお米を産直販売し続けているケースが3軒ほどの農家で見られます。そのうちの1軒の場合、年間40俵くらいのようです。毎月20名ほどの方に送られています。
 この「交流から産直へ」というのが重要だと思いますね。
 ポイントは、「市場が価格を決める」のではなく、「人と人の付き合いが価格を決める」からです。後者の場合、コメをつくる人の努力、コメが作られる環境、その環境を保全する努力などがすべておコメの購入者に理解されるので、いわば「まともな価格」がつくのです。
 いま、震災復旧・復興の支援で栄村の一人一人と都会の人たちの交流が広がっています。ですから、お米の産直を広げるチャンスなのですね。
 もちろん、震災復興支援で栄村の農家と交流する人が増えれば自動的にお米の産直が増えるというわけではありません。さまざまな努力が必要です。
 

* 我が家で、交流会で、美味しいおコメを食べてもらおう

 まず、都会の人たちが村を訪れられた時、自分の家のおコメを食べてもらうことが大事です。ほぼ間違いなく、「このおコメ、美味しい!」という反応がかえってくるはずです。


* 販売のための作業を自らの仕事に

 都会の人が1ヶ月に食べるおコメの量は限られています。夫婦2人の世帯であれば、自宅で食べられるお米の量は1ヶ月5kg程度、年間で1俵(60kg)というのが現在では平均的です。          
 しかも、都会の家ではお米を長期にわたって低温で保管しておくことは困難です   、
ので、村で低温保存している玄米を、毎月、 5kgずつ精米して送ってあげることが必要になります。


畦ごはん(稲刈り交流会の後、畦でご飯を炊き食べるとき、「栄村のお米ファン」誕生間違いなし!)

 これは相手が1軒だけであればさほど大変な作業ではないかもしれませんが、5軒、10軒となってくれば、けっして楽な作業ではありません。
 でも、これが大事なのです。
 毎月、毎月、購入者に何らかのお便り(自筆の手紙、あるいは印刷したお便り)を届けることもしなければならないでしょうから、お相手1軒あたり少なくとも毎月1〜2時間くらいの作業が必要でしょう。年間では計12〜24時間の作業となり、これを時給計算すると時給800円として9,600〜19,200円にもなります。1俵3万円で売れたとしても、9,600〜19,200円の販売経費がかかるわけですが、それは自分自身に対して支払われるわけですから、精米販売での収入1俵3万円が減るわけではありません。
 逆にいうと、この販売のための仕事をJAなどに任せると、経費をどんどん引かれてしまい、農家の手取りが減るわけです。


* グループから集落での取り組みへ
 私自身、いまからもう5年前になりますが、青倉受託作業班の話が中日新聞と東京新聞に掲載されたことからお米の注文がどんどん来て、その発送作業を担当したことがありますが、産直の対象が10軒、15軒と増えてくると、精米・袋詰め・発送の作業は大変になってきます。注文が日々、パラパラと入って来るのに対応して作業していると、毎日、米発送の作業を細々とやらなければならないので、大変になってしまいました。
 そこで改善したことは、まず、毎月の発送日を決めました。毎月25日です。
 つぎに、お米の精米・袋詰め・発送の作業を“仕事”として有給化し、作業をする人を雇いました。約60軒くらいの購入者がおられますが、1ヶ月当たり3〜4日の作業量になります。時給800円として、19,200〜25,600円の経費になりますが、60軒(平均5kg)×2,500円とすると、販売代金は15万円ですので、経費を除いても1俵あたり25,000円前後になります。もちろん、低温保存の経費等も差し引かなければなりませんが、とにかく1俵あたり3万円のおカネが自分のところに入り、そこから自分に支払う作業賃や自分の家での諸経費を出すのですから、十分にやっていけるはずです。
 こういう取り組みを、個人からグループへ、そして集落単位に広げ、精米や発送の作業を共同作業としてやっていくようにすれば、規模も大きくしておくことができます。


* いちばん大事なことは生産だけでなく、販売を農家の仕事とすること

 ここまでに書いてきたことは、あくまでも骨組み(粗筋(あらすじ))のような話ですので、実際に産直をやる場合のことを細かに考えていけば、もっともっと厄介な話も出てきて、一筋縄ではいかないと思いますが、そこで諦(あきら)めたり、挫(くじ)けたりしないでほしいのです。
 いちばん大事なことは、農家の仕事をおコメの生産だけに限っていると、儲けを流通を担う業者に持っていかれる、逆に、農家が生産のみならず、販売も手掛けることによって、正当な価格、収入を実現することができるということです。これが「農業の6次産業化」と呼ばれていることの最も基本的かつ大事な意味なのです。


* それぞれのおコメの物語をつくろう(=ブランド化)

 先にも書いたように、支援や交流で村(みなさんの家・集落)を訪れた人におコメを食べていただき、その美味しさを実際に味わってもらうことがいちばん重要ですが、それだけではありません。
 やはり、「ブランド化」が必要です。
 でも、「ブランド化」って、いったい、どういうことなのでしょうか。
 なにか格好いい名前を付けて、宣伝することなのでしょうか?
 そうではないと思います。
 どんな環境で作られているのか、どんな人が作っているのか――こういうことを大事にし、それを多くの人たちに知らせていくことが本当のブランド化に通じていくのです。
 そうすると、エノキの場合の「大庭(おおば)君家(くんち)のえのき茸」というようなブランドや、おコメの場合の「青倉米」というようなブランドが生まれてくるのです。
 こういうことに取り組んでいくのが、復興(−集落の復興・再生)だと思うのです。

小滝のおコメをご予約ください

 私は特定の集落だけを支援するものではありませんが、昨春からいち早く集落の復興プロジェクトに取り組んでおられる小滝のおコメについて、最近も色々とお話を聞いていますので、小滝のおコメの販売に協力したいと思っています。


* 小滝の田んぼを守るために作付面積を広げた小滝の人たち
 小滝集落は20年前から稲作の共同化に取り組んでおられますが、共同化の対象は育苗と田植え作業に限られています。
 平素の水管理、畦畔管理、収穫、そして出荷は個々の農家の仕事です。
 昨年の震災で集落を離れざるをえなかった人、病気で引退せざるをえなくなった人、亡くなった人などが出て、今年、ようやく復旧した田んぼを誰がやるのかが大きな問題となりました。
 集落で何度も話し合った結果、ほとんどの人が作付面積をかなり広げることになりました。多い人は1町歩以上の拡大です。これを1俵15,000円程度で出荷していたのでは割が合いません。


稲がグングン成長する小滝の復旧田んぼ


* 素晴らしい復興プロジェクトを支援するには小滝米の購入がいちばん有効
 小滝集落は昨年4月、小滝復興プロジェクトチームを発足させ、若者も含めて、集落が一丸となって、復旧・復興に取り組んできました。地震から1年目の今年3月12日、NBS(長野放送、8チャンネル)月曜スペシャルで「ふるさと小滝―栄村震度6強からの1年」というテレビの特集番組も放送されましたので、ご存じの方も多いと思います。


NBSスペシャルのDVDカバー

 なによりも真っ先に取り組まれたのは田んぼの被害の徹底調査。表土だけでなく、耕盤もきちんとクラックを埋めるという画期的な復旧工事が栄村で実現されたのも、この小滝の取り組みがあってのことでした。                
 また、全壊判定を受けた公民館を自分たち自身の手で修復し、3つのお宮もすべて復旧しました。 
 さらに、昨年10月30日の古道歩きツアーの成功も実現されました。
 ある意味で華々しい成果ですが、しかし、これはまだ復興への序曲にすぎません。復旧した田んぼを守るために作付面積を拡大した人たちがきちんと報われるおコメの販売が実現できなければ、小滝の復興は進みません。
 ですから、小滝でこの秋に獲れるおコメをいい値でみなさんに購入していただくことが小滝の復興を最も土台のところで支えることになるのです。


* いま、前金払いのご予約を
 米作りをする農家にとって悩ましい問題は、いくらおコメを作っても、生産過程ではサラリーマンのように賃金が支払われるわけではなく、おコメが売れないことには収入がないということです。
 ですから、「安すぎる」と思っていても、出荷時点でコメ代金の仮払いをしてくれる農協に出荷せざるをえなくなるのです。
 そこで、復興支援には、ただおコメを買っていただくというだけでなく、いまの時点でこの先1年間、月々お届けするおコメの代金を前払いしていただくことが不可欠になるのです。
 仮に年間60kg(国民一人当たりの年間平均消費量、1俵相当)を購入していただくとなると、精米(白米)で3万円程度になるでしょう。3万円の支出は各家計にとって、けっして小さな金額ではないと思いますが、月々に換算すれば2,500円です。そして、お茶碗1杯分では30円なのです。
 復興への支援の思いを込めて、是非、前金払いの予約をお願いする次第です。
 小滝米の販売主体はあくまでも小滝集落の人たちですので、私は仲介をするだけです。メールなどでご連絡をいただければ、小滝の人につなぎますので、是非、ご協力・ご支援をお願いします。


* 小滝の人たちに求められる努力

 私が小滝の復興支援−小滝米の前払い予約を呼びかけるのは、小滝の人たちがお米作りだけでなく、先に書いたような販売努力をされることを前提としています。
 小滝米のいわばブランド化には、少なくとも、つぎのようなことが必要だと私は考えます。
 第1に、田んぼの地震被害からの復旧の歩みを記録化し、全国の人びとにお知らせすることです。小滝の人たちご自身が被害の様子や、被害状況調査、復旧計画づくりのプロセスを写真に撮ったり、図面化した記録を作ったりされています。そういうものを活用して、「小滝米、復旧・復興への歩み」のような記録物語を作ることです。
 第2に、震災よりも前の小滝集落の米作りの歩み(歴史)、先人の努力を歴史物語としてまとめ、発表することです。
 小滝は江戸時代、米を作れる土地・水がほとんどない、貧しい村だったと言われています。そこで、元禄時代(1680年代)に小滝堰が作られ(水の取り入れ口は大久保の山の中)、ようやく一定規模の田んぼができるようになりました。それでも、つい30年ほど前まで、小滝はたえず水不足に悩まされ、「他の集落が豊作の年は小滝は干(かん)ばつ」(夏に晴天の日が多いので他の集落では豊作になるが、小滝は水不足でコメがとれなくなる)と言われたそうです。
 それを打開したのが、林道・滝見線(現在の村道)がつくられるとき、大免沢川などから水を引く水路を道路の下に埋設してもらえるよう村に働きかけ、新しい水路を確保したことでした。
 こういう話(歴史)を小滝米物語として簡潔に整理して、提示することが有効だと思われます。
 第3に、おコメ−田んぼ−水の話だけでなく、小滝の環境の素晴らしさ、小滝の暮らしの営みなど小滝の全体像をお知らせしていくことです。
 先日ご紹介した古道・志久見街道沿いの炭窯跡などの話も盛り込んでいくと素晴らしいと思います。あの炭窯は樋口利行さんのお父さん光行さんが昭和30年代まで炭を焼いておられたところです。利行さんはNo.158(7月16日)で紹介した炭窯跡をさらに整備され、下写真のように炭窯の全貌が見えるようにされました。これは小滝を訪れる人、古道を歩いてみようと思う人を増やす非常に重要な材料になると思います。



 第4に、米の低温保存、精米・出荷発送作業を集落の人たちが共同で取り組む体制をつくっていくこと、さらには、月数回とか週1回でもいいので、小滝を訪れれば、古民家「隣りの家」などで美味しい小滝米とちょっとした田舎料理が食べられるような仕掛けを小滝の女衆が中心になってつくっていくことではないでしょうか。小滝の人たちは何度も中越被災地で復興に取り組み、成果をあげている集落を訪れ、見学されていますので、私がこんなことをわざわざ言わなくても、そういうことをすでにお考えでしょうが…。


志久見街道から見上げる

 おコメの産直ということでも、小滝が1つの復興モデルを実践的にきりひらいていって下さると、栄村の復興の道筋が具体的に見えてくるのではないでしょうか。
 栄村の復興をご支援くださるみなさま、よろしくお願いします。
 また、村内のみなさんでこのような取り組みを考えている個人、集落がおられましたら、是非、私にお教えください。