栄村の将来を占ううえで非常に重要な議会でした
〜3月議会の結果をご報告します〜
3月6日(月)から13日(月)まで実質6日間、平成29年第1回定例会が開催されました。
3月定例会は新年度予算を審議・決定する議会で、年間の議会の中でもとりわけ重要な議会です。私自身は、新年度予算の審議は初めての経験。審議すべき内容は質・量ともに多く、かつ重大で、とても緊張し、正直なところ精力を使い果たしたという感じです。すべてをご報告するのは難しいですが、ポイントを絞って、村民のみなさんの暮らしを左右する問題について可能なかぎり詳しく、わかりやすくお伝えしたいと思います。
☆ 栄村の道路や橋、学校などはこれからも維持できるのか?
――「栄村公共施設等総合管理計画」について
今議会で、私がある意味で最も衝撃をうけたものがこれでした。
「公共施設等」とは、役場や学校、温泉宿泊施設などの公共施設の他、道路、橋、上下水道などの村が保有する施設のことです。簡単にいえば、私たちの日々の暮らしを支える“インフラ”と呼ばれるものです。
建物も道路も建設が完了し、利用が始まると同時に劣化(れっか)が始まります。傷みが生じ、修繕、ひいては建て替え(作り替え)が必要な時がやってきます。
■ インフラ更新に総額500億円、年平均約13億円が必要!
結論から紹介しましょう。
「計画」は平成29年度から平成58年度までの30年間。平成29〜67年度の間にインフラ更新に約500億円(正確には497億1千万円)が必要だというのです。建物の寿命との関係で更新費用が最も多くなるのは平成54年度で、なんと30億円が必要になります。今議会で審議された新年度予算の総額は約35億円ですので、村の予算の1年分をまるまるインフラ更新に投入せねばならなくなるということですね。
更新費用が少なくて済む年もありますので、平均すると1年あたりの更新整備費は12億7千万円になります。12億7千万円というのも大変な額です。栄村の年間予算額は数年の内に震災前の23〜25億円くらいに縮小すると言われています。ですから、年間予算の半分をインフラ更新費が占めることになります。そうすると、医療や介護の社会保障費、農業などの産業の維持・育成の経費はどうやって確保できるのかという問題が出てきます。
■ 国が「インフラ長寿命化基本計画」を推進
いわば「インフラ更新長期計画」と呼ぶのがふさわしいこの計画、じつは国が4年前に「インフラ長寿命化基本計画」を作り、全国すべての地方自治体に同様の計画を作るように求めたことをうけて、村が検討した結果です。
前の東京オリンピック(1964年)の時につくられた首都高速道路の傷みが激しいことはよく知られています。日本は高度経済成長時代にたくさんの道路や橋、建物をつくりましたが、それらがすべて寿命を迎えるわけです。
■ 私たちは何に注意すればよいか
村が今回つくった30年間にもわたる「管理計画」は、あくまでも更新費用の試算であり、ただちに実施に移されるというものではありません。
やはり今議会で決定された「第6次栄村総合振興計画」、そして3年毎に策定される「実施計画」で、更新時期を迎えた施設をどうするかが具体的に検討・決定されるという段取りになります。
ですから、慌てる必要はありません。
でも、「計画」の中にこんな文言があることに注意をはらうことも必要です。
「人口減少時代を迎える中で、人口規模にあった公共施設等
の統廃合や廃止による健全財政の推進を図る必要性が高ま
ってくることが想定されます。」
自分が暮らす集落に必要な村道が傷んだとき、これまでならば、「あそこの道路を直してください」と言えば、即時ではないにしても、数年内には直してもらえたのが、「人口が減ったから、その道路はもう維持できない、不要だ」という話になりかねないのです。
大事なことは、みなさんの集落、地区で暮らしに欠かすことができない施設や道路がいまどんな状況なのかに関心を抱き、不安なことなどがあれば声をあげ、将来見通しについて尋ねることです。
集落の人が少なくて、様子を見て廻ることや、将来見通しを考えることが難しいという場合もあるでしょう。そういう場合は、私のような議員に気軽に声をおかけください。震災の時、議員がそういう役割を果たしえたかと問われれば、たしかに疑問符がつくかと思いますが、私は頑張ります。集落のお話をお聞きし、現場を自らの目で見て、役場とのつなぎをきっちりやっていきます。是非、声をおかけください。
☆ 新年度予算から見える栄村の進路
■ 新年度予算に賛成した意味
13日(月)の3月定例会最終日、新年度予算の採決が行われました。挙手採決ではなく起立採決ですが、私は起立して「賛成」の意思を表明しました。全会一致での可決です。
私は新年度予算にまったく問題点がないとは考えていません。今回の本紙「議員活動報告」でもいくつかの問題点を指摘します。そのうえで、4月1日からの村民の暮らしに直結する行政の執行を円滑に進めるには、ひとまず新年度予算を成立させ、そのうえで必要な施策の修正・追加を求めていくのが適切ではないかと考え、「賛成」を選択しました。村(村長)にフリーハンドを与えたという意味ではありません。新年度予算の執行状況の厳しいチェック、不明な問題点のいっそうの解明などに努めていきます。
■ 暮らしに直結する新施策の紹介
新年度予算に盛られた新しい施策のうち、みなさんの暮らしに直結するものを紹介します(なお、紹介すべきものは多々ありますが、この1年間、議会などの場で重要テーマとなっていたものを中心に紹介します)。
● 森集落の上水道
「森地区水源転換工事」に5,530万円が計上されました。1号崩壊地横の震災前水源地に取水堰堤をつくり、導水管1,750mを敷設します。雪消え直後から工事を開始し、秋口までに完成することをめざします。
また、「管路清掃委託料」4千万円が計上されました。マンガンで汚染されている管路を清掃するための経費です。(以上の森の上水道関係は「簡易水道特別会計」での事業です)
なお、基本予算が28年度に確保されている開田用水の頭首工工事等も雪消えを待って実施されます。
● 青倉集落の中条川からの用水の沈砂池の建設
青倉集落の用水に中条川から土砂が入って堆積する問題の対策。「青倉用水沈砂池造成工事」が「村単水路改修工事」として400万円計上されました(一般会計農林水産費、受益者負担金15%)。
● 高校生等通学費補助金
高校生が通学のための定期券を購入した経費等を2分の1まで補助するもので、予算総額は262万円です(一般会計民生費の中の児童福祉費)。
たとえば森駅から飯山高校に通う場合、年間4万2千円の補助になり、意義は大きいと思います。ただ、購入後の事後補助ですので、家計負担の軽減には十分でありません。今後、購入前の補助に変えるよう、要望していくことが必要です。
● 農業・水路に関わるもの
農業は担い手の高齢化によって農地の不耕作化が生じる、水路維持作業が困難化するなど、深刻な問題に直面しています。この事態に対応する格別な新規事業は基本的にみられませんが、28年度創設制度の新規集落への適用などがありますので、いくつか紹介します。
・ 志久見と野田沢の水路関係の補助
「集落農業維持活性化支援事業」200万円。
集落が水路管理道路の改修等を行うのに対して、重機借上料や燃料費を補
助します。
・ 農作業機械施設導入支援補助金の拡充
「集落営農組織育成事業補助金」1千万円。
集落営農に取り組む組織が作業施設や農業機械を導入するのを補助するも
ので、28年度は600万円でした。なお、この事業はふるさと納税を活用す
る農業振興基金を原資としています。
・ 東部水路の詳細設計
「県営中山間地域総合整備事業 栄地区」事業費が5,250万円が計上され、
その大半は青倉集落の圃場整備に充てられますが、事業内容の中に「水路
詳細設計3水路」が書き込まれています。坪野水路(上・下の2本)と野々
海水路です。ただし、確実に東部水路(坪野水路)にいくらを入れるとは
書かれていませんので、予算執行プロセスを注視していかないと、実施に
至らない危険もあると思われます。
・ トマト苑1階の改修、加工品の増産
トマト苑の1階は現在「遊休施設」化していますが、加工品の増産ができ
るように改修を行う経費424万円が計上されました。
● 村史編纂(へんさん)事業を開始
栄村の歴史が誰にもわかる「栄村史」をつくることが長年求められてきましたが、新年度、ようやく着手することになりました。新年度の予算額は896万8千円(一般会計教育費社会教育費)。
新年度は村史編纂室を立ち上げ、編纂の方針及び計画の策定、編纂チームの編成などを進めます。村史の編纂には何年もかかりますが、ついにスタートすることになったことが重要です。今後、教育委員会から各種のお知らせがされると思いますが、みなさんの知恵、意見をどしどし出してください。
■ 問題点がある予算
3頁でも書きましたが、新年度予算にはいろいろな問題点があります。
振興公社に関わる予算、栄村高齢者福祉総合センターの社協(栄村社会福祉協議会)への指定管理とデイサービス事業の移行に伴う予算については別のところで取り上げますので、ここでは2つのことに限って指摘します。
● 切明の水道水源地を約100万円で買収とは?
商工観光費予算の中にわずか1行、「公有財産購入費 103万1千円」というのが計上されています。「説明」欄にも「用地取得費」と書かれているだけで、どこの土地なのかも分かりません。
議員からの質問への答弁ではじめて、「切明の水道の水源地。所有者は『雪あかり』さん」と明かされました。
村の水道の水源地を村が用地取得する事例は過去に1例しかなく、ほとんどすべての水道水源地は寄贈または借地です。
なぜ、購入する必要があるのか? 誰もが不思議に思います。森川村長は「中国人が日本の水源地を買いあさっている。第三者に渡ると厄介なことになるので、村で買い取りたい」と述べました。
議論は平行線になり、私を含むかなりの議員は納得できませんでした。私は最後に、「所有者は村の人。そんな心配をしなければならないのは悲しいことです」と発言しました。「雪あかり」さんといえば振興公社の理事長を務める人。村長が信頼をおく人が水道の水源を村外の人に売り渡すなんて心配をすること自体が失礼な話だと思うのですが、どうなのでしょう? 理解不能な予算計上です。
● 28年度に実績がない「経営指導委託料」にまたも300万円
一般会計とは別に「スキー場特別会計」(総額1億539万2千円)というものがありますが、その中に、「経営指導委託料 300万円」が計上されています。
ここ数年、毎年計上されています。しかし、数年前に「非圧雪を売り出すと良い」というアドバイスがあった以外には、格別の「経営指導」の実績はありません。
阿部伸治議員が質問したところ、「先方からは『もう引き受けたくない』と言われたが、昨年度も計上しているので、新年度も計上した」という答弁。
典型的なムダ遣い予算です。これは議会で監視し、無駄な執行がされないようにしなければなりません。
■ 栄村の財政の中長期的な見通しは?
予算の中には、「歳入」(収入のこと)の中に「村債」という費目があります。わかりやすく言えば、29年度、村が借金をいくらするかということです。新年度予算では3億9,070万円が予定されています。29年度の「歳入」に占める割合は11%(1割強)にのぼります。
他方、「歳出」(支出のこと)には「公債費」という費目があります。これまでの借金の返済のために支払わなければならない金額です。29年度は2億9,679万1千円が計上されています。歳出の8.3%です。村債発行予定額は28年度よりも減っていますが、借金返済額(公債費)は28年度よりも増えています。
借金に村の財政がどれくらい依存しているのかは、村の中長期の将来を見通すうえで、最も重要な指標の1つです。
栄村の村債依存度(借金依存度)、歳出に占める公債費(借金返済費)の占める割合は、現在のところ、危険水域に入っていません。しかし、平成29年度予算を見るだけでは、今後5年、10年の見通しは見えません。私は、予算審議の中で、「借金の返済が今後どうなっていくのか。村は中長期的な見通しをきちんと算出しているのか」と問いました。村長の答弁は、「していない」でした。それでは困ります。私は「中長期の見通しをきちんと算出すべきだ」と言い、村長は「4月1日から県職員(係長級)が派遣されてくるので、その人のノウハウを活用してやる」と答えました。
これまでの村議会での予算審議ではこういうことは質疑されてこなかったようですが、それでは予算審議を充分に尽くしたとはいえません。
私は、「中長期見通し」を算出する作業の進展具合をきっちりとチェックしていきたいと思います。
新年度予算に関して、みなさんにご報告すべきことはまだまだあると思いますが、ページ数の関係もあり、ひとまず以上とします。
☆ 振興公社をめぐる問題はどうなったか
ここ数ヶ月、栄村の村政で最もホットなテーマとなってきたのは栄村振興公社をめぐる問題です。村民のみなさんは、「3月の議会ではどうなったのか?」、いちばん知りたいと思っておられることだと思います。
■ 指定管理料で1,850万円を投入
新年度予算の商工観光費の中で、「振興公社観光施設管理委託(料)」として1,850万円が計上されました。
7日午後に開催された議員全員協議会(村長提出)で、この指定管理料額の算出方法が示されました。施設の光熱水費の50%などを村が負担するというものです。しかし、実際のところは、公社の赤字を埋めることが狙いです。
新年度は、指定管理の契約を更新する村の施設が数多くあり(物産館、絵手紙収蔵館、苗場山頂ヒュッテ等)、関係議案が数多く提出されましたが、既存の指定管理で村が指定管理料を支出しているのは振興公社だけです。なぜ、公社だけ赤字になるのか、検討が必要なところです。
■ 出捐金を2,900万円投入
さらに、新年度予算とは別に、議会最終日に追加議案として「平成28年度補正予算(第12号)」が提出されました。振興公社への出捐金(しゅつえんきん)を2,900万円投入するというものです。「運転資金を金融機関から借り入れるための担保金とする」としています。
しかし、議会に出された説明書では、「4月に指定管理料1,850万円が入金されれば9月末まで必要な支払ができる」とされていますので、この時期に村が2,900万円もの資金を投入する必要性はないと私は考えます。
この補正予算に私は反対しましたが、採決結果は賛成10:反対1でした。
これでは、「1月12日の議会は何だったのか?」と問われても答えようがありません。公社をめぐる問題は、別の機会に改めて詳しく書き、村民のみなさんのご意見をお聞きしたいと考えています。
☆ 高齢者総合福祉センターの社協への指定管理委託とデイサービス事業の社協への委託について
最近、村内放送で「社協の事務所が森の高齢者総合福祉センターに引越しました」、「役場健康支援課の健康増進係が役場地階に移転しました」と告知されました。
「引越した」ということは理解できますが、「なぜ?」は放送だけではわかりません。
高齢者総合福祉センターと小赤沢の高齢者生きがいセンターの建物がすべて社協に指定管理委託され、森の高齢者総合福祉センターから役場の事務室はすべて撤退したのです。そして、デイサービスの事業も村直営から社協への委託に変わりました。
平成30年度には「総合事業実施」ということで介護サービス関係のほとんどを社協に委託する方向のようですが、その制度設計はこれからということで、全容が見えません。
介護サービスがますます重要になる中、社協の手でどのような事業運営(経営)が可能なのか、明確な像は見えません。今後、この問題も詳しく報告していきたいと思っています。