12月定例会の報告
12月3日から9日まで、今年最後の村議会定例会(第4回)が開かれました。その主な内容を報告します。
◎ 1億6,800万円余の補正予算の内容
議案審議の主軸は一般会計補正予算(第6号)です。
1億6,851万9千円を追加し、R2年度予算の総額を34億6千万円余りとする案が提出されました。
■ 災害復旧の査定完了に伴う経費計上と新型コロナ対策関連費が主
〈東部水路頭首工災害復旧〉
補正額で最も大きいのは農地等災害復旧費で総額1億3,461万7千円です。今年7月の豪雨災害(九州・球磨川などで大災害が生じた豪雨と同じ時)の災害復旧で月岡、野々海、菅沢、大久保などの農地・農業施設などが対象に入っていますが、いちばん大きなのは東部水路の頭首工です。東部水路頭首工復旧工事の工事費は1億1,385万円。
東部水路頭首工は、じつは、昨年の台風19号で大きな被害を受け、今年、復旧工事が行われる予定で、すでに総額7,810万円の工事契約も締結されていました。しかし、まさに工事に本格的に着手しようとしていた7月に再被災し、復旧計画を一から組み立て直すことを余儀なくされました。頭首工よりも下流部の水路工の部分は今秋、当初予定通りに進められ、間もなく完了します。(なお、頭首工の工事契約費3,220万8千円は「契約変更」で減額され、その分、本年度予算は後に減額されることになっています。)
7月豪雨災害復旧工事の財源ですが、国等の災害復旧補助金が1億1,900万円余入りますので、村の一般財源からの補正支出は269万円に限られます。
〈新型コロナ対策臨時交付金関係〉
今回の補正でもう1つ、大きな額を占めているのは新型コロナ感染対策関係です。
集落支援交付金1,533万1千円、北野天満温泉の対策費316万8千円、スキー場レストラン等の換気対策工事が475万2千円。この3件の総額2,325万1千円は国から交付される新型コロナウイルス感染症対応臨時交付金が充当される予定で、村の一般財源からの追加支出はありません。
この臨時交付金は一括交付ではなく、事業毎に国に申請し、国の許可が出た後に交付されます。村の財政当局には国との折衝をしっかりお願いしたいと思います。
■ 「村財政の適正規模はおよそ27億円」ということは、どのように理解すればよいのか
村の今年度当初予算は29億円台でした。しかし、何度かの補正を経て、今回の補正後は総額34億6千万円余となります。
一方、宮川幹雄村長は就任以来、栄村の財政規模として、「一般会計で27億円程度が妥当」という見解を示しています。
そこで、12月定例会では「財政需要は27億円で収まるのか。補正をすると、あっという間に3億円、さらに3億円と膨らむ」として、「適正財政規模27億円」に疑問を呈する質問がありました。それに対して、宮川村長は、自主財源に乏しい栄村では、「交付税・村税で17億円程度」とし、「27億円は大変な金額」という見解を示しました。
どう考えたらよいのでしょうか。
私は「補正予算とは本来、どういう性格のものなのか」という点をしっかり理解することに一つの鍵があると思います。12月定例会で審議した一般会計補正(第6号)の主たるものは災害復旧と新型コロナ対策で、国等からの財政支出があるものです。補正予算は本来、こういう性格のものです。ところが、前村政を振り返ると、本来は年度当初予算で計上すべき新規政策、しかも国等の財政支援の無いものも補正予算に計上し、前年度からの繰越金をせっせと支出し、さらには財政調整基金を取り崩すなどしていました。こういうものは「補正」の枠からはみ出したものであり、財政基盤を掘り崩すものです。
いま、村は次年度予算編成期を迎えています。限られた財政の中で、必要不可欠な施策をどう予算化するかをギリギリと考えぬ抜き、災害や感染症等の突発事態がない限り、補正の必要がない年度予算を組み上げるために、課長クラスなど役場職員の奮闘を求めたいと思います。
◎ 旧振興公社の備品(精米機)問題で議会が検査
議会は、旧振興公社の備品問題で地方自治法98条に基づく検査の実施を12月3日(定例会初日)の本会議で決定し、産業社会常任委員会(以下、「産社委」と略)に検査の実施を付託しました。産社委は4日から8日にかけて検査を行い、9日(定例会最終日)の本会議に検査結果を報告しました。本会議では産社委からの報告について質疑を行った後、採決を行い、産社委の検査報告を全会一致で承認しました。
検査報告のポイントを以下、お伝えします。
■ 補助金交付規程に反していることが明白に
問題になっている事件は、旧振興公社が補助金で購入した精米機が役場職員によって持ち出され、別団体に渡っていたというものです。
この問題のポイントは、
1. 旧振興公社に精米機の存在を記した備品台帳がなかったと
されているが、それは事実か。
2. 「精米機(約130万円)の購入費を「消耗品費」として経理
処理したので財産(備品)として取扱われていなかった」と
されているが、それは事実か。
3. 当該職員は、平成29年10月、「当時の振興公社理事長から
「持って行ってくれ」と言われたので、持ち出した」と言って
いるが、それは事実か。当時の理事長が「自分はそんなことを
言っていない」とされているが(11月21日の全協での村の説
明)、職員の弁明と元理事長の発言のいずれが事実なのか。
の3点です。
議会の検査の結果は、私なりに整理すると、以下の3点です。
1. 補助金の交付規程では、取得財産(精米機はこれに相当)は
「取得財産等管理台帳」に記載して管理しなければならないと
されている。実際、公社は補助金事業を実施した平成24年度に
「取得財産等管理台帳」を作成し、補助金交付元に提出してい
る。よって、「備品台帳がなかった」という主張は事実に反する。
2. 交付規程では、補助金事業の経理は「他の経理とは区別できる
独自の経理としなければならない」と規定されている。平成24
年度当時、公社は補助金の独自経理で精米機購入費を「機械装
置等費」と記入した報告書を補助金交付元に提出している。他
方で、公社全体の経理では、このことを明確にせず、「消耗品
費」扱いで処理している(「独自の経理とする」との交付規程
に反する処理)。「消耗品費として経理処理したので、財産
(備品)として取扱われなかった」という主張は成り立たない。
3. 精米機等の財産は、交付規程では補助金事業の終了後も5〜7年
間、管理する責任が公社にあり、財産を処分する場合は、補助
金交付元の承認が必要である。平成29年、精米機が持ち出され
た当時は、この「5〜7年間」に該当する。精米機の持ち出しは
交付規程に違反している。
4. 平成29年、精米機が持ち出された当時、当時の公社理事長と当
該職員の間で、どういうやりとりがあったのかは、村にも記録書
類がないので、議会の検査では事実解明できない。
■ 検査の意義は明白
今回の問題で1つの大きな謎は、100万円以上もの機械が「消耗品」として扱われ、「備品(財産)台帳に記載なし」という、通常の感覚では理解し難いことが主張されていることでした。
議会が検査を行うことによって、上記のようにこの謎が完全に解明されました。補助金で購入された精米機は明白に「財産」であり、平成29年当時は公社に管理の責務があり、勝手な処分は許されていなかったことが判明しました。
議会の存在意義の柱は「行政に対する監視(チェック)」です。そのために、地方自治法98条=検査権は、必要な時に的確に行使すべきものなのです。
補助金の取り扱いに際して、職員は交付規程の順守等について慎重かつ厳格でなければなりません。交付規程に反すると、全額返済、さらには刑事罰という事態にまで発展しかねません。今回の検査の結果を行政側はしっかりと受け止めていただいたいと思います。
■ H29年度当時の公社理事長らは事実関係を明らかにされたい
今回の問題の当事者は役場の当該職員だけではありません。交付規程により財産を管理する責務があったのはH29年当時の振興公社理事長です。この理事長には事実関係を明らかにする責任があります。さもないと、事実関係の全貌は明らかになりません。
元公社理事長が自らの見解と責任を公に明らかにされることを望みます。
◎ 国に3つの意見書を提出
12月定例会では、国に対する意見書を3つ、全会一致で決議し、国に提出しました。
これは地方自治法第99条に基づく地方自治体議会の権利を行使するものです。
地方自治法第99条:普通地方公共団体の議会は、当該
普通地方公共団体の公益に関する事件につき意見書を国
又は関係行政庁に提出することができる。
意見書は、
「コロナ禍による需要の消滅と在庫増の影響から米
価下落を阻止する」
「安全・安心の医療・介護の実現と国民のいのちと
健康を守るため」
「災害からの復旧・復興及び国土強靭化等に向けた
社会資本整備の促進を求める」
の3件です。
■ コロナ禍による在庫米を備蓄米として買い入れ、生活支援に活かす
この意見書は、栄村農民組合から議会に提出された請願を採択し、その請願内容を基に作成したものです。
コロナ禍で外食産業や学校給食のコメ需要が22万トンも激減し、民間在庫が前年比12万トン増え、201万トンになっています。この状態を放置すると、米価の下落が止まりません。
よって、国が備蓄米として買い入れること、そして、その備蓄米をコロナ禍で生活困難になっている人たちへの生活支援に活用することを求めています。
■ コロナ禍での医療ひっ迫の中、地域の実状を無視した「病院の再編統合」はストップを
この意見書は、「地域医療と公立・公的病院を守る長野県連絡会」の栄村議会への陳情を採択し、それを基に作成したものです。
国は昨年、具体的な病院名を名指しで、「公立公的病院の再編統合」を促しました。栄村に直接に関係する病院としては、飯山日赤病院が挙げられています。国の病院再編統合計画は豪雪の山村地域の実状をまったく無視した暴論です。
いま、北海道旭川市や大阪府は医療ひっ迫で非常事態になっています。この事態は、「コロナが広がったから」ということだけから生じたものではありません。問題の根っこにあるのは、行政改革や財政再建の名の下に強行されてきた病院の再編統合、医療従事者の削減や待遇の劣化です。
国は医療や介護に関わる政策を抜本的に見直し、医療・介護分野に十分な財政資金を投じる必要、いや責務があります。また、感染症対策は、新型コロナのような新たな感染症が発生してから慌てるのではなく、平時から感染症研究や感染症対応医療体制の充実を図る必要があります。
■ 千曲川の「中抜け」解消を
「災害からの復旧・復興及び国土強靭化等に向けた社会資本整備の促進を求める」は先の2件のような請願・陳情によるものではなく、議員発議の意見書です。さらにその背景には県の建設事務所からの働きかけがあります。
全協での協議の結果、産社委員長の私が意見書の発議者となりました。
私は、意見書の原案には自身の考えとは食い違う箇所もありましたが、台風19号被害の復旧や千曲川緊急治水プロジェクトの早期実現、千曲川のいわゆる「中抜け」区間の解消を実現する観点から、この意見書の提出に協力しました。
〈非常に悩ましい問題〉
意見書には、「国土強靭化等のための予算を5か年以上別枠で確保する」ことを求める項目があります。実際、この間の治水対策の予算の多くは「国土強靭化計画」の枠組みで確保・支出されています。と同時に、災害対策や治水対策とは関係のないものまで「国土強靭化計画」に埋め込まれている事実があります。
政府は、11日、国土強靭化「5カ年加速化計画」を閣議決定しました。12月12日の信毎3面で報道されていますが、同計画には「害獣の捕獲強化」(環境省)や「鉱山の公害防止」(経産省)、はては「刑務所など矯正施設の警備システムの更新」(法務省)までが組み込まれています。「?」と思わずにはいられません。国交省所管の関係でも、観光用の高規格幹線道路の建設など、災害対策・「強靭化」とは関係ないと思われるものがあります。
災害対策・治水対策の実現に力を注ぐとともに、筋の通らない予算は認めないよう、注視していくことが必要だと思います。
◎ 「第8期介護保険事業計画」の策定に注目する必要があります
1〜2頁で書いた補正予算関係ですが、介護保険特別会計の補正予算(第2号)の質疑で注目すべき答弁がありました。
補正自体は減額費目と増額費目があり、プラスマイナスで総額101万3千円の増額、事務的微調整の範囲内です。しかし、答弁によれば、「居宅介護から施設介護へのシフトが見られる」とのことです。
そうなってくると、今後、介護保険事業に要する経費が増大する可能性があります。
いま、村の介護保険事業は「第7期計画」に基づいて実施されていますが、今年度末までに「第8期計画」を策定することになっています。その計画次第で介護保険料が改定(値上げ)される可能性が出てきます。
村は、同計画に関する「懇話会」での議論をふまえて計画を策定するとしていますが、「懇話会」等での議論というのはしばしば形骸化しがちです。来年3月の予算議会にいきなり介護保険料の値上げ案が提出されても困ります。
私は総括質疑で、「第8期計画の策定途中で議会全員協議会(全協)等の場で経過報告をするように」求めました。
村民のみなさん、とくに65歳以上の方は、介護保険料に大きな負担を感じておられると思います。「第8期介護保険事業計画」の策定作業を注視し、一人ひとりの思い・意見を村に届けていくことが必要です。「こういう意見を役場に伝えてほしい」ということがあれば、気軽に声をかけください。みなさんの声を役場に確実にお届けいます。
◎ 穂保の本復旧工事現場等を視察
12月定例会が閉会した翌日の10日、議会の視察研修として、昨年の台風19号で堤防決壊した長野市穂保の本復旧工事現場等に行ってきました。
例年、11月頃に一泊二日の議員視察研修が恒例となっていますが、今年はコロナ禍のため、宿泊等を伴うものは取り止め、日帰りで穂保等の視察、国土交通省千曲川河川事務所から千曲川治水対策の現状と見通しを直接に聴くことを計画しました。国交省担当者からの説明は分かりやすく、いろいろと勉強になりました。村の水害対策、治水対策に活かしていきたいと思っています。写真を2枚紹介します。
穂保の決壊箇所の本復旧工事現場で説明を聞く。写真左に見える法面工事箇所は川表側。
同じ場所の川裏側、つまり穂保の居住区側。すでに工事が完了。土の堤防のように見えますが、大型連接ブロックが敷き詰められ、その上に覆土が被されています。危機管理型ハード対策と呼ばれているものです。「越水しても粘り強い」、簡単には決壊しないようにすることが狙いです。